2018年4月1日日曜日

送り状に他人の名前を書くと私文書偽造となるか(大法院2018年1月25日判決)

 本件は、被告人が叔母と叔父を陥れるために、叔母と叔父を送り主として偽物の爆弾を送る際に、送り状に叔母と叔父の名前を書いた行為が私文書偽造になるかどうかが争われた事件です。
 原審は、送り状は刑法上の私文書に当たらないとして無罪としましたが、大法院は送り状は荷物の送り主が誰であるかを証明することができる文書なので、刑法上の私文書に当たるとし、私文書偽造及び行使罪が成立するとしました。
 送り状には住所と名前しか書かれていないのに私文書偽造になるというのは変な感じがしますが、私文書偽造という犯罪が文書の作成者を偽る行為であるとすると、送り状が文書であるとすれば私文書偽造が成立するというのは仕方がないのかもしれません。
 この理屈が成り立つとすると、送り状を使用せずに荷物の箱に直接住所と名前を書いた場合であっても、文書は紙に書かれている必要はないので、嘘の住所と名前を書けば私文書偽造になるということになるのでしょう。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 被告人はCの甥(Cの兄Dの息子)で、2~3年前、インターネット上でCの娘のふりをしながら男らに売春を持ち掛けて相手方がCの住居地に訪ねてくるなど問題が発生してCから叱責を受けたことがあるが、2017年3月ごろ、再びCから「またお前が携帯電話で娘のふりをしていたずらをしているのか」という言葉を聞くと、Cに対して不満を抱くようになった。これに被告人は政府の関係部署から事業支援金を受けて株式会社Eを運営していたCに不利益を与えるために、Cの妻F名義で偽物の爆発物などを宅配を利用して政府ソウル庁舎に送ることにした。
 被告人は、2017年4月上旬ごろ、爆発物であるダイナマイトのように見えるように爆竹50個を黒いテープで巻いて偽物の爆発物を作り、政府の関係部署に対して要請事項を記載したA4用紙63枚を作成した。
 被告人は、2017年4月16日ごろ、住居地からコンピュータを利用して紙に「広州広域市東区G建物506号E,F」という文言を出力した(以下、この出力物を「本件出力物」という)。上の住所は、Cが運営する株式会社Eの本店の住所である。
 被告人は、2017年4月17日、北広州郵便局から宅配運送を依頼し、偽物の爆発物と要請事項記載用紙63枚を入れた宅配ケースの発送人欄に本件出力物を貼ってから(受取り主には「ソウル特別市鍾路区政府ソウル庁舎担当者宛」と記載された出力物を貼った)郵便局職員に宅配ケースを渡したが、当時郵便局の職員は被告人が本件出力物に記載されたF本人であるかを確認しなかった。
 上の宅配ケースは光化門郵便局に運送されたが、担当者が受取り主不明を理由に発送人欄の本件出力物上の住所にこれを返送し、返送された宅配ケースは2017年4月19日Cに配達された。Cは宅配ケース内の偽物の爆発物を本物の爆発物と誤認して警察に申告し、申告を受けた警察官などが現場に出動することになった。
 被告人は捜査機関から、偽物の爆発物などが入っている宅配ケースを政府ソウル庁舎に送りながら送り主名義を騙っていたので、送り主住所を叔母の会社で記載した理由に関して、叔母と叔父が自分を馬鹿にして不満があり、政府ソウル庁舎が偽物の爆発物が入った宅配ケースを受け取って叔母か叔父がこれを送ったと判断するようにして叔父が政府から受けている事業支援金を受け取れないようにするためだと陳述した。
 このような事実関係から分かる次のような事情、すなわち本件出力物は宅配ケースの送り主欄に付着されたもので、その内容物を受取り主である政府ソウル庁舎担当者に送るものが「F」であるという事実を表示、証明するものである点、被告人は本件出力物に関する私文書偽造および偽造私文書行為の点と併せて起訴されたところのような脅迫の犯行を計画して実行したものが自分であることを隠す意思で、偽物の爆発物などが入った宅配ケースに自分の姓名と住所を記載する代わりに送り主の名義を叔母で、送り主の住所を叔父の会社で記載して受取り主に対する関係で脅迫の主体を被告人でない他の者と特定しようとしていた点などを先に見た法理に照らしてみると、本件出力物は宅配ケースに入っている偽物の爆発物などを受取り主に交付する者として脅迫犯行行為者を表示して、受取り主がこれを確認する手段となるものなので、取引上重要な事実を証明する文書やその内容が法律上または社会生活上意味のある事項に関する証拠になりうるものなので刑法が定める私文書に該当するというのが妥当である。

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