預金は銀行など法律が定める金融機関を受入人とする金銭の消費貸借契約であって、その預金口座に入金された金銭の所有権は金融機関に移転し、預金主はその預金口座を通した預金返還債権を取得するので、金融機関の職員は預金主から預金口座を通した適法な預金返還請求があればこれに応じる義務があるだけで、預金主との間にその財産管理に関する事務を処理する者の地位にあるとは言えない。
しかしながら原審は、被告人がスタンダードチャータード銀行の職員として被害者らから貸付申請を受けたので顧客である被害者らが貸付金を使用できるように被害者ら名義の預金口座に入金された貸付金を任意に引き出さないようにする義務を負っているなどの判示のような理由を挙げて被告人が被害者らの事務を処理する者に該当すると間違って認定し、その前提で原審で選択的に追加された業務上背任の公訴事実を有罪と判断した。したがって、このような原審の判断には業務上背任罪で定める他人の事務及び損害に関する法理を誤り、判決に影響を及ぼす違法がある。