2018年4月6日金曜日

取引の相手方が問題となった事例(大法院2018年1月25日判決)

 本件は、軽食のフランチャイズ加盟店に食材を供給していた食品メーカーが、流通業者から代金を支払ってもらえなかったことから、フランチャイズの加盟本部に対して代金の支払いを求めたものです。
 原審は、加盟本部が食品メーカーの選定や、価格の選定を行っていたこと、流通業者が加盟店から集金して食品メーカーに支払っていたことを理由に、流通業者は加盟本部の手足となって食材の供給をしていただけで、取引の真の相手方は加盟本部であるとして代金の支払いを命じました。
 これに対し、大法院は、食品メーカーが税金計算書を流通業者に発行していたこと、帳簿に取引の相手方として流通業者の名前を記載していたことを理由に、取引の相手方は流通業者であるとして差し戻しを命じました。
 コンビニやスーパーでの買い物とは異なり、会社などの取引では物を渡した後にお金をもらうのが通常なので、物は渡したのにお金がもらえないということがよくあります。売買契約の相手方は、実際に物のやり取りをしている者であるのが原則なので、物を渡した者にお金を請求することになりますが、相手がお金を持っていなければどうしようもありません。そのような場合に、どうにかして他にお金を持っている人からお金をもらおうとすることになります。本件は、まさにそのような場合であったと思われますが、原審では加盟本部に支払い義務を認めているので、必ずしも理由をこじつけてお金をもらおうとしていたのではないのかもしれません。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 一般的に契約の当事者が誰であるかはその契約に関与した当事者の意思解釈の問題に該当する。当事者の間に法律行為の解釈を巡って見解が異なり当事者の意思解釈が問題になる場合には法律行為の内容、そのような法律行為がなされた動機や経緯、法律行為によって達成しようとする目的、当事者の真正な意思などを総合的に考察して論理と経験則に従って合理的に解釈しなければならない。
 原審の判決理由によれば、被告は「アタル」という営業表示を利用して軽食専門店のフランチャイズ事業をした者(加盟事業取引の公正化に関する法律(以下、「フランチャイズ事業法」という)上の加盟本部に該当する)、株式会社マル流通(以下、「マル流通」という)は被告と「物流及び営業管理の手数料支払い契約」(以下「本件物流手数料契約」という)を締結し、被告の加盟店に食材などを供給した者、原告は食材の製造、販売業者であって被告の加盟店に供給されたスンデなどの食材などを納品した者である。
 本件で、原告は被告とスンデなどに関する食材の納品契約を締結し、マル流通をとおして被告の加盟店に食材を納品していたことを理由に被告に未払いの食材代金の支払いを求めている。これに対し、被告はマル流通が直接原告から食材を購入して被告の加盟店に供給していたと主張し、原告と納品契約を締結した当事者は被告でなくマル流通であると争っている。
 したがって、本件の争点は、原告との間で食材の納品契約を締結した当事者が被告かマル流通かである。
 原審は、その判示のような理由を挙げ、下のように判断した。即ち、原告は被告と「被告の加盟店で使用するスンデなどの食材を原告が被告と合意して定めた納品単価など契約条件に従って被告に納品したが、具体的な納品物量は被告の専担物流配送業者であるマル流通が加盟店の注文量を集めて原告に伝達することと定めることにした」という食材納品基本契約を口頭で締結したといえる。このような契約にしたがって原告は被告の履行補助者であるマル流通をとおして加盟店の注文量を伝えられて加盟店に配送していたので、結局、被告にスンデなど食材を納品したものである。
 しかし、先に見た法理と記録に照らしてみると、原審の上のような判断はそのまま首肯しがたい。その理由は下の通りである。
 被告とマル流通の間に締結された本件物流手数料契約は、マル流通が直接被告の指示または加盟店(被告の指示と加盟店を合わせて、以下「被告の加盟店など」という)から注文を受け、被告が選定した食材の製造、生産業者から食材を納品してもらい、被告の加盟店などに運送し、その物品代金をマル流通自身の責任で直接被告の加盟店などから回収してからその販売利益(被告の加盟店などから集金した商品代金から納品業者に支払う食材代金を精算した金額)の一定比率を被告に手数料として支払う構造になっている。また、汎用食品(砂糖など「アタル」商標がない材料)を除外した食材の購入先の選定及び品質規格の指定、購入価格や売却価格の選定は被告の固有権限としていた。
 このような本件物流手数料契約の内容を見ると、被告の加盟店などに材料を供給する主体は無論、原告のように食材の製造、生産業者から食材を納品してもらう主体もマル流通であることを当然の前提としている。即ち、上の契約は加盟本部である被告がマル流通を「中間供給業者」として指定する内容といえる。
 フランチャイズ事業法はフランチャイズ事業の特殊性を考慮し、一定の場合には加盟本部が加盟店に原材料または副材料を特定の取引相手(加盟本部を含む)と取引するように強制することを許容しているが(フランチャイズ事業法第12条第1項第2号、第2項、同法施行令第13条第1項、別表2第2項ナ目)、そのような事情のみで加盟本部がその供給取引の相手方となったり供給取引自体による何らかの責任を負担するようになるものではなく、さらに加盟本部は各原材料や副材料別に供給業者を一つ一つ指定して、加盟店と直接取引するようにすることは非効率的であるので、中間供給業者を指定してその業者をして各材料別の供給業者から材料を供給してもらって加盟店と取引するようにする場合がある。この場合、加盟本部は品質基準の維持のために中間供給業者として加盟本部が指定した業者のみから材料を供給されるように定めることができるが、このように加盟本部が各材料の供給業者の指定に関与していたとしてもそのような事情のみで加盟本部と各材料の供給業者をその供給取引の当事者と断定するだけの典型的な徴憑ともいい難い。
 実際にマル流通は本件物流手数料契約に従って、被告の加盟店などから商品の注文を受け、被告が選定した食材の製造、生産業者から食材を納品してもらって自身の物流センターの倉庫に保管しており、被告の加盟店などに注文商品を供給して直接加盟店から代金を集金してからその販売利益の一定比率を被告に手数料として支払ってきた。また、マル流通と被告は2013年11月22日に本件物流手数料契約を解約しながら、マル流通が購入してその物流センターの倉庫に保管していた食材など在庫商品をその購入価格基準で被告が引き取ることにするなどの内容で合意をすることもしている。
 被告の品質検査を経てスンデなど食材の納品業者に選定された原告もマル流通の物流センターにスンデなど食材を納品し、マル流通から食材代金を支払ってもらってきただけでなく、それと関連してマル流通宛に税金計算書を発行してきた。「ヌリ食品」はマル流通の設立前の照合であるが、原告が2010年1月1日から2013年12月31日まで作成した取引内訳書に供給された者が「アタル(ヌリ食品)」または「アタル(マル流通)」と記載されている。原告が被告から食材代金を受領したり食材の納品と関連して被告に税金計算書を発行したことはなく、原告が本件提訴前まで飛行を相手に未払い食材代金の支払いを要求したといえる資料もない。
 一方、2012年11月ごろから被告の会計を担当する会計士がマル流通名義の口座のOTPカードを保管しながらマル流通の食材納品業者に対する食材代金支払いに関与したことがあるが、これはマル流通が食材納品業者に対する食材代金と被告に対する手数料を延滞する状況でフランチャイズ事業の安定及び正常化のためにマル流通の同意の下になされた加盟本部の中間供給業者に対する一定程度の関与といえるのみである。
 このような本件物流手数料契約の内容及びその趣旨、被告、マル流通、原告の間に実際になされた取引形態などを総合してみると、マル流通は単純に被告の配送及び集金業務を代行した者でなく、加盟本部である被告の中間供給業者であって、飛行が選定したスンデなどの製造生産業者である原告と直接納品契約を締結するという意思によって原告からスンデなど食材を納品してもらってその名義で代金を決済し、税金計算書を交付されてきて、原告もやはり納品契約の相手方をマル流通として認識していたといえる。
 それにもかかわらず、原審はその判示のような理由のみで、原告と食材納品契約を締結した当事者を被告とし、被告が原告に未払い物品代金を支払う義務があると判断してしまった。このような原審の判決には当事者の確定または法律行為の解釈に関する法理などを誤解して判決に影響を及ぼす過ちがある。この点を指摘する被告の上告理由の主張は理由がある。 

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