2018年4月19日木曜日

株式交換に適用される税法の条文(大法院2018年3月29日判決)

 本件は、完全子会社化するために実施された株式交換において、完全子会社となる会社ん株式が過大に評価されているとして税務当局が子会社になる会社の株主に対して贈与税を賦課したのに対し、大法院が適用する条文が誤っているとして原審に差し戻したものです。
 交換は、日本の民法では「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産を移転すること」とされていますが、「売主が物を売り、その代金で買主から物を買う」行為であると見ることもでき、まさに株式交換は「所有している株式を売却し、現金を受取り、その金銭で新たな株式を購入する」行為とみなしているので、原則として子会社になる会社の株主には譲渡税が発生することになります。
 本件の原審もこのような考えにもとづいて子会社になる会社の株式が過大評価されていた場合には、子会社になる会社の株主が「財産を高価で譲渡した」場合の条文が適用されるとしましたが、大法院は株式交換は完全子会社化のためのテクニックなので「法人の資本を増加させる」場合の条文を適用すべしとしました。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 商法上、株式の包括的交換は完全子会社になる会社の株式が完全親会社になる会社に移転する取引と完全子会社になる会社の株主が完全親会社になる会社から完全子会社になる会社の株式と対価関係にある新株を割り当てられて完全親会社になる会社の株主になる取引が結合して一体となされる。また、完全子会社になる会社の株主が株式の包括的交換を通じて利益を得るかどうかは完全子会社になる会社の株主が完全親会社になる会社に移転した完全子会社になる会社の株式に対する相続税および贈与税法上の評価額と完全親会社になる会社から割り当てられる新株に対する相続税および贈与税法上の評価額の差額、即ち、交換差益が存在するかどうかによって決定される。
 このような商法上の株式の包括的交換の取引構造と特性、そして関連規定の文言内容と立法趣旨および体系などを総合してみると、商法上の株式の包括的交換によって完全子会社になる会社の株主が得る利益については「財産の高価譲渡による利益の贈与」に関する旧相続税および贈与税法第35条第1項第2号、第2項や「新株の低価発行による利益の贈与」に関する相続税法第39条第1項第1号タ目を適用して贈与税を課税することができず、「法人の資本を増加させる取引による利益の贈与」に関する相贈税法第42条第1項第3号を適用して贈与税を課税しなければならない。
 原審判決の理由と記録によると、次のような事実が分かる。
 訴外Aと原告2はスターNMエンターテインメント株式会社(以下「スターエム」という)が2005年11月24日に実施した有償増資(以下「本件有償増資」という)に参与し、訴外Aは原告1、原告3、原告4(以下「原告1ら」という)名義で各5000株を、原告2は3000株を割り当てられた。
 スターエムは2005年12月5日にコスダックに登録されている株式会社バンポテック(以下「バンポテック」という)とスターエムの株主らがスターエムの株式全部をバンポテックに移転し、その代わりにバンポテックが発行する新株を取得することでバンポテックを完全親会社、スターエムを完全子会社とする商法上の株式の包括的交換に関する契約を締結した。
 その後、スターエムとバンポテックは2005年12月20日に株式交換比率を修正してバンポテックがスターエムの総株式86500株を引き受け、その対価としてスターエムの株主らにスターエムの株式1株当たりバンポテックの株式36.4625株を発行することにする株式交換契約を締結し、バンポテックは2006年2月27日にこれに従って原告らからスターエムの株式を引き受ける対価として原告らにバンポテックの株式を発行した。
 被告の松坡税務署長はこのような株式の包括的交換の過程でスターエムの株式価値が過大評価され、原告2らがスターエムの株式を高価で譲渡することで利益を贈与されたという理由で相贈税法第35条第2項を適用して原告2に贈与税を課税した。
 このような事実関係を先に見た法理に照らしてみると、原告2が上のように株式の包括的交換によって得た利益については「法人の資本を増加させる取引による利益の贈与」に関する相贈税法第42条第1項第3号を適用して贈与税を課税することはできるとして、「財産の高価譲渡による利益の贈与」に関する相贈税法第35条第2項を適用して贈与税を課税することはできない。
 それにもかかわらず、原審はこれと異なり商法上の株式の包括的交換によって完全子会社になる会社の株主が得た利益について相贈税法第35条第2項を適用して贈与税を課税したことが適法であると判断した。このような原審の判断には株式の包括的交換による贈与利益に対する贈与税の課税に適用する法令などに関する法理を誤解し、判決に影響を及ぼす過ちがある。この点を指摘する趣旨の原告2の上告理由の主張は理由がある。

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