2018年4月16日月曜日

LGBTイベントのために公園を使用できるか(済州地方法院2017年10月27日判決)

 本件は、LGBTのイベントを行うための公園の使用許可及びイベントのブースを設置するための占有許可を一度は承認したにもかかわらず、周辺住民からの反対の声が上がったことを理由に許可を撤回したのに対し、撤回の効力の停止処分を求めたものです。
 LGBTのイベントというと性的なイメージがあるため、青少年に悪影響を与えるのではないかと周辺の住民の方が心配になるのは理解できます。しかし、そのようなLGBTに対するイメージを払拭するためにイベントを行っているのですから、周辺の住民の方の反対があるからという理由でイベントをさせないようにするのは間違っているといわざるを得ません。
 憲法は国民が守るものではなく、政治家が守るものであるという言い方をすることがありますが、憲法というのは法律を作るときや解釈をするときの基準になるものなので、法律を作ったり解釈する機会のない人にとっては憲法を守らなければいけない状況にならないだけで、他人の権利を尊重するという姿勢は守らなければなりません。
 社会の中では常に権利と権利とが衝突し、その調整が必要とされています。他人の権利を尊重するというのは、自分の権利が侵害されてもいいから他人の権利を認めるということではなく、自分の権利と他人の権利が衝突したときに自分の権利のみを主張するのではなく、憲法に基づいた権利の調整に従うという姿勢が大切なのではないかと考えます。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 被申請人は、当初、本件回答をとおして露店行為の禁止及びイベント用として設置した施設物の完全復旧などを条件に公園の使用を許可したが、本件イベントを反対する請願などを理由に前のように本件委員会側に公園の使用に関する既存の承諾を撤回することを通報した。したがって、申請人らの立場から見ると、本件回答は一応公園使用に対する被申請人の許可行為であって、その後にある本件撤回通報は公園の使用を拒否する行政庁の意思表明として理解する素地がある。
 しかし、都市公園法など関係法令を見ると、利用者らの性的趣向などのみを理由に行政庁をして申請人らのような一般公衆に対して都市公園の使用自体を制限、禁止することを許容する規定は見つけられないところ(本件委員会側から本件イベントの開催予定日に公園に対する集会申告を併せて終わらせたことは先に見たとおりである)、本件審問期日などで確認された被申請人側の立場もまたこれと大きく異ならない。即ち、被申請人は「本件イベントに参加しようとする者らの公園の使用に対しては関係法令上の禁止行為をした場合、事後的に過怠料などを付加することは別として、公園を利用すること自体を禁止することはできないので、本件撤回通報もまた公園の利用を全く禁止しようという意図でなされたものではない」という立場を明らかにしたところである。
 結局、本件回答ないし撤回通報の法的性格やそれに関する被申請人の真正な意思などとは関係なく、被申請人側が訴訟の過程で本件イベントの開催のために公園を使用する行為自体は問題としないという立場を明らかにした以上、申請人らとしては必ず本件申請をとおして公園の使用と関連した本件撤回通報の効力の停止などを求める必要がない。
 したがって、申請人らのこの部分の申請は申請の利益がないので受け入れない。
 公園を本件イベントの場所として使用する問題とは異なり、被申請人は公園内のイベント用ブースの設置が可能かどうかに対しては、本裁判所の釈明の要請にも関わらず、それに対する立場を具体的に明らかにしていない。申請人らは2017年9月27日付の公文をとおして被申請人に公園内のイベント用ブースの設置を要請したのには都市公園法第24条による占用許可の申請意思が含まれていたものといえるところ、それに関する被申請人の主張と立場が明らかでないが、上で見た事情及び訴訟の過程での態度などを参酌すると、被申請人としては一応本件撤回通報をとおしてイベント用ブースの設置に対して既存の承諾意思を撤回したと評価できる。
 しかし、本件記録及び審問自体の趣旨によって分かる次のような事情、すなわち、本件委員会側は先に見た集会申告などをとおして公園内で本件イベントを開催することが可能であるが、申請人らが設置しようとしていたブースは集会やイベントなどの開催に一般的に必要な施設物でありながら、その設置期間が一日を超えない短期間である上、現状復旧もまたかなり容易であるといえる点、被申請人が公園内での本件イベント自体は禁止しないとしながらイベント会場内のブースの設置のみを禁止する公益的な必要性は大きいとはいえない反面、申請人らを含めた本件イベントの参加者らはイベントの進行のための基礎的な施設の設置さえ禁止されることで事実上の集会ないし表現の自由の一部を制限されるようになるが、該当する基本権の本質および内容に照らして当事者らが受ける上のようなイベントの管理および進行上の制約を決して軽く見ることはできない点、本件イベントと類似した目的で開催されていた他の地域でのクィア文化祭はもちろん通常の集会、イベントなどでも上のようにブースの設置のみを制限した事例は探すことが難しい点、被申請人もまた本件回答をとおして申請人らの公園内のブースの設置要請を受容したしたが、本件撤回通報をとおして既存の立場を覆したとものといえるが、「本件イベントの進行途中に青少年の有害物と指定された性器具などが展示、販売されたり、突発的な過多な露出行為があるかもしれない」という漠然とした憂慮にもとづいた一部の請願を除外しては申請人が既存のブースの設置を許す立場を撤回するほどの重大な事情の変化があったとは言えない点などを総合すると、その開催が迫っている本件イベントの円滑な進行を混乱させると予想させる本件撤回通報によって申請人らを含めたイベント参加者に発生する損害を予防するために上の撤回通報の効力を停止する緊急な必要性があると認められ、上のような措置が公共の福祉に重大な影響を及ぼす憂慮があるといえるだけの資料もない。
 したがって、申請人らのこの部分の申請は理由がある。

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