2018年4月5日木曜日

盗品の買主に損害賠償を請求できるか(蔚山地方法院2018年3月23日判決)

 本件は、会社Aに勤務する職員Bが、会社所有の資材を横領し、会社Aに無断でC(会社Dの代表取締役)に販売した事案で、会社Aが原告となり、職員Bだけでなく、C及びDに対しても損害賠償を請求した事件です。
 裁判所は、Bについては損害額の全額を、C及びDについては損害額の80%を支払う義務があるとして、連帯で支払うように命じました。
 本件は盗品の売買に関する事案ですが、原則として資材の所有権は原所有者Aにあるので、即時取得が認められない限り、C及びDが資材をAに返還し、BがC及びDに代金を返還することで解決します。
 しかし、資材が既に使用されていて返還することができないのが通常で、この場合は、C及びDはAに返還するものがなく、Aが資材の価格相当の損害を被るので、AがBに対して損害賠償を請求することになります。もっとも、横領するような者が資産をもっているはずがなく、AはBに損害賠償を請求しても損害額を満足させることができないので、C及びDに請求できるかどうかが問題となります。
 本件は、盗品がどうかを確認すべき注意義務を怠ったと判断しましたが、盗品かどうかを確認すべき注意義務の根拠は明らかにされていません。通常の取引では、そのような注意義務があるとは思えませんが、本件は、販売価格が原価を下回っていたこと、1年以上にわたって売買していたことなど、Cが本件資材が盗品であることを知っていたであろうことを推定させる事実があったことから、過失による不法行為を認めた事例判断であると思われます。
 また、今回は連帯責任を認めましたが、B、C及びDの責任割合までは明らかにしていないので、例えばBが全額を支払った場合に、C及びDにどれだけ求償できるかのかということに興味がもたれます。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 認定事実によれば、被告Bは業務上保管していた原告所有の本件資材を原告の知らないうちに売ってから、その代金を任意に使用し、被告Cは被告Bが販売する本件資材が盗品なのかを確認することができたにもかかわらず、そのような注意義務を怠った過失により原告に本件資材の仕入原価128,522,912ウォン相当の損害を負わせた。したがって、特別な事情がない以上、上の被告らは共同して原告に損害賠償額128,552,912ウォンとこれに対する遅延損害金を支払う義務がある。
 また、被告Dは代表者である被告Cが上のように不法行為をしたことによって原告に仕入原価91,515,662ウォン相当の損害を負わせたので、被告Cと共同して原告に上の金額とこれに対する遅延損害金を支払う義務がある。
 但し、原告は本件配管資材の仕入原価を計算するのにおいて付加価値税を適用しなかったので、付加価値税額に該当する12,852,291ウォンも原告の損害額としてこれを賠償しなければならないと主張する。しかし、原告が付加価値税を含めて本件資材を仕入れたとしても、該当税額と同じだけ売上税額から控除を受けたので、上の付加価値税額を原告の損害とすることはできない。
 被害者の不注意を利用して故意の不法行為を犯した者が、まさに被害者の不注意を理由に自分の責任を減らしてほしいと主張することは許されない。しかし、これはこのような事由がある者に過失相殺の主張を許すことが信義則に反するためなので、不法行為者のうちの一部にそのような事由があったとしても、過失による不法行為者ついては被害者の過失を参酌して過失相殺をすることができる。
 原告の資材を故意に盗んだ被告Bと異なり、被告Cは被告Bが販売しようとする物件が盗品なのかに対する注意義務を起こった過失により原告に対して不法行為を犯したものなので、上の法理に従って過失相殺を主張することができる。そのため、みてみると、原告は被告Dが3年余りという長い期間に原告の横領してきたにもかかわらず、これを発見できなかったが、もし原告が在庫管理などを徹底にしていればより早く犯罪事実を発見して損害の拡大を防止することができたにもかかわらず、このような注意を尽くさなかった過失がある。したがって、原告のこのような過失を参酌して被告C、Dの責任を80%に制限する。

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