2017年11月9日木曜日

軍人の死亡区分通報の行政処分性(大法院2017年8月24日判決)

 この事件は、1971年に軍隊に入隊した息子が上司のいじめによって自殺したのですが、2014年に法令が改正されて自殺が殉職として認められるようになったことから、40年ぶりに息子の自殺を殉職として認めてもらえるように訴えたものです。
 殉職と認められた場合、死亡補償金が支払われたり、国立墓地に埋葬してもらえたりということがあるので、審査委員会に殉職と判断してもらうことは意味があります。
 裁判所は死亡補償金の支給や国立墓地の埋葬の決定は、審査委員会の判断と関係なく行われるので、審査委員会に判断のやり直しを求めることはできないとしました。
 確かに審査委員会が殉職と判断しなくてもそれぞれの管轄行政庁が死亡補償金の支払いを決定したり、国立墓地の埋葬を決定することはできるのかもしれませんが、事実上、審査委員会が殉職と判断しなければそのような決定はしないのであるならば、審査委員会の判断のやり直しを求めることを認めるべきだと思います。
 日本でも行政のどのような行為が行政訴訟の対象になるかは未だに固まっていないようですが、個人的には「行政の意思決定の内容」が取消訴訟や義務付け訴訟の対象になると考えた方が分かりやすいのではないかと思います。
 以下は、判決の一部抜粋です。
 

 原告の息子亡B(以下、「亡人」とする)は、1971年1月6日に陸軍に入隊後、1971年6月13日22時頃、警戒勤務中に曹長から叱責を受け、銃器を自分の上腹部に発射して死亡した。
 軍疑問死真相究明委員会は、2009年8月21日、「亡人は先任兵から受けた殴打と過酷行為など内部いじめとこれに対する指揮官らの管理不行き届きが重要な原因となって死亡したと認定した」という内容の真相究明決定をした。
 原告は、2014年9月29日、戦功死傷者処理訓令(以下、「本件訓令」という)第6条により国防部中央戦功死傷者委員会(以下、「審査委員会」という)に死亡区分再審査を要請した。審査委員会は、2015年1月8日に亡人が上訓令戦功死傷者分類基準表の殉職要件に該当しないと議決し、被告は2015年1月30日に原告に上の議決結果を通報した(以下、「本件通報」という)。
 一方、国家有功者などの礼遇及び支援に関する法律、報勲補償対象者支援に関する法律、軍人事法、軍人年金法、国立墓地の設置及び運営に関する法律など死亡区分と関連する法令には審査委員会の審査に従って決定するという趣旨の規定が存在しない。
 このような事実関係と関連法令の内容を上の法理に照らしてみると、亡人が国家有功者や報勲補償対象者の要件に該当するかどうかや、死亡保証金の支給対象または国立墓地埋葬対象者であるかどうかなどは、各関連法令に従って管轄行政庁が独自的に審査及び判断過程を経て決定し、参考資料に過ぎない審査委員会の死亡区分に覊束されなければならないとみる法的根拠がない。したがって、本件通報は亡人の死亡に関する事実関係を確認するものに過ぎず、それ自体として亡人の遺族である原告の権利義務に直接的影響を及ぼす行為とは言えないので、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。

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