2017年11月8日水曜日

選挙権のない者の名前を勝手に使うことは犯罪になるか(大法院2017年8月23日判決)

 予備選挙において選挙権のない者の名義で勝手に投票した被告人に対して検察が投票しない自由を侵害したとして起訴したところ、投票しない自由が侵害されるのは選挙人に限られるとして、選挙の自由妨害罪が成立しないとした判例です。

 公職選挙法第237条第5項第2号は予備選挙と関連して「予備選挙運動または交通を妨害したり、偽計、詐術その他不正な方法をもって予備選挙の自由を妨害した者」に対して5年以下の懲役または1千万ウォン以下の罰金に処すると規定している。ここで「偽計、詐術その他不正な方法をもって予備選挙の自由を妨害」する行為は予備選挙運動または交通を妨害する行為に準ずるもの、すなわち予備選挙運動や投票に関する行為それ自体を直接妨害する行為をいい、「予備選挙の自由」は公職選挙候補者の選出のための予備選挙の「投票の自由」と予備選挙立候補の自由を含めた「予備選挙運動の自由」をいう。一方、予備選挙の自由のうち「投票の自由」は選挙人がその意思に従って候補者に投票をしたりしなかったりする自由をいう。したがって、予備選挙と関連して選挙権がなく選挙人といえない者を相手のその投票に関する行為を妨害したとしても特別な事情がない限り選挙人に対して投票の自由が侵害される結果が発生することはありえないので、上の規定で定める予備選挙の自由を妨害する行為に該当するとはいえない。
 第1審は判示のような理由で、被告人がH名義を盗用してC政党の一般比例代表オンライン予備選挙で比例代表候補であるLに投票したとしても、Hは選挙権がない者で、自分の名義で投票をする点に対する認識を全く持っていなかったので、被告人の行為は予備選挙の自由を妨害する抽象的な危険をもたらす程度に過ぎず、これをHの投票しない自由それ自体を直接的に妨害する行為に該当すると判断し、原審は判示のような理由で投票に参与しない自由は選挙権があることを前提にしているので被告人の行為によってHの投票に参与しない自由を妨害されたといい難いと判断した。
 
 として、原審の判断を維持し、選挙の自由妨害罪については無罪としました。
 日本でも選挙の自由妨害罪は公職選挙法第225条の規定があり、先日の都議選の際に安倍首相の演説中にシュプレヒコールをしたのが選挙の自由妨害罪に当たるのではないかと指摘する新聞もありましたが、演説を中断しなければならない程度のヤジでなければ選挙の自由妨害罪には当たらないようです。

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