2017年11月6日月曜日

わいせつ性の新しい判断基準(大法院2017年10月26日判決)

 本件はわいせつ性の判断について大法院が新しい判断基準を示したものです。表現物の中に性器が含まれている場合に表現物全体からわいせつ性を判断するという基準は以前からありましたが、本件は表現物が性器それだけであっても学術的、思想的な表現であればわいせつ物に当たらないと判断したものです。
 以下は、判旨の一部抜粋したものです。
 わいせつ物がそれ自体としては何等の文化的、芸術的、思想的、科学的、医学的、教育的価値をもっていないとして、上記のわいせつ性に関する議論の特殊な性格のため、それに関する議論の形成、発展のために文化的、芸術的、思想的、科学的、医学的、教育的な表現などと結合される場合がある。このような場合、わいせつ表現の害悪がこれと結合された上のような表現などを通して相当な方法によって解消されたり、多様な意見と思想の競争メカニズムによって解消されうる程度というなどの特別な事情があれば、このような結合表現物によって表現行為は公衆道徳や社会倫理を毀損するものでなく、法秩序全体の精神やその背後にある社会倫理ないし社会通念に照らして容認されうる行為であって、刑法第20条に定められた「社会常識に違背しない行為」に該当する。
 被告人がインターネットのブログにアップした本件掲示物は、「検閲者日記#4この写真を見ると性的な刺激を受けたり、性的に興奮しますか?」というテーマのもと「18回全体会議でこのブログの写真がわいせつ物であるとしてブロックされた」という文句で本文が始まった。そして、すぐに別のブログの画面5つをコピーペーストした男性の勃起した性器の写真8枚(以下、「本件写真」とする)と裸の男性の後ろ姿の写真1枚を画面全体の半分を少し超える部分にわたってアップした。続いて、情報通信に関する審議規程(以下、「審議規程」とする)第8条第1項を紹介した後、「性行為に侵入しない、そして性行為に関する叙事が含まれていない性器のイメージ自体をわいせつ物とするのは表現の自由や審議規程に照らして不当である」という趣旨で被告人の意見を付けている。それにより、本件掲示物は本件写真とわいせつ物に関する議論の形成、発展のための学術的、思想的表現などが結合された結合表現物である。
 結合表現物である本件掲示物を通した本件写真の掲示は、目的の正当性、その手段や方法の相当性、保護法益と侵害法益間の法益均衡性が認められるので、法秩序全体の精神やその背後にある社会倫理ないし社会通念に照らして容認されうる行為に該当する。
 としました。なお原審も「本件写真が勃起した男性の性器を赤裸々に露出しており、低俗であるとかいやらしい感じを与えるが、被告人が別途の性的な説明または評価を付加しておらず、そのまま下に審議規程を紹介しながら本件写真をわいせつ物と判断した放送通信審議委員会の多数意見に対する批判的見解を打ち明けている以上、本件掲示物の全体的な脈絡から本件写真がわいせつ物に該当すると断定することができない」としてわいせつ性を認めていないので、結論自体に問題はないのでしょうが、わいせつ性の判断が裁判官の主観によって決まるのではないかという危惧はあります。

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