2017年11月21日火曜日

源泉徴収の差額を社員に請求できないとした事例(蔚山地方法院2017年10月26日)

 原告会社が事業所得として源泉徴収していた販売手当について、税務署から給与所得として源泉徴収するように指摘されたことから、その差額を職員に請求したところ、事業所得として源泉徴収するという約定があるのでその差額を請求できないとした裁判例です。
 源泉徴収すべき金額が間違っていたとしても確定申告で正しく納税すればいいように思えますが、法律で定められた金額を源泉納税義務者が納税するように決められているので、納税義務者がその差額を納税するのではなく、源泉納税義務者である会社が差額を納税しなければなりません。その差額分については、源泉納税義務者が納税義務者に対して請求するのが通常の流れです。
 本件は、事業所得税の分を源泉徴収するという契約があるので、それを超える分を請求できないとしましたが、そうすると差額分について納税義務者には所得が発生することになります。裁判は請求が認められるかどうかだけ判断すればいいのかもしれませんが、その所得は何なのかという問題が残ることになり、座りの良くない結論と感じました。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 被告は原告会社の名目上の社長に過ぎず、実質的には職員として勤務していたが、原告会社の代表理事Cと販売実績に従った販売手当を事業所得と申告し、所得金額の3.3%のみ事業所得税として源泉徴収し、残りの税金など関連問題は原告会社が全て責任を負うと合意していた。
 したがって、例え原告会社が給与所得に該当する販売手当を事業所得として間違って申告し、事業所得税のみ源泉徴収していたとしても、販売手当を事業所得として申告し、事業所得税として3.3%のみ源泉徴収することと約定した以上、それによる危険負担を被告等職員に再び転嫁することはできない。

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