2018年3月23日金曜日

受刑中の被告人に執行猶予の判決ができるか(仁川地方法院2018年2月22日判決)

 本件は、仁川拘置所に収監されていた被告人が、懲役刑が確定して矯正施設に移されるのが嫌で、自分の住所地に近い拘置所に移動できるように、知人に自分を詐欺罪で告訴させた事件です。これにより、虚偽告訴教唆罪で執行猶予付きの懲役刑となりました。
 懲役刑が確定したからと言って直ちに刑務所に行くわけではなく、しばらくは拘置所にいて、その期間に別の事件で逮捕されたり起訴されたりすると、刑務所ではなく、そのまま拘置所で受刑することになります。被告人は、遠くの刑務所に行ったら家族から面会に来てもらえなくなるので、家の近くの拘置所で受刑できるように策を弄したのだと思われます。
 なお、執行猶予について、韓国の刑法では、禁固以上の刑を宣告した判決が確定したときからその執行を終了したり免除されてから3年までの期間に犯した罪について刑を宣告する場合には執行猶予を付けることができません。
 本件は、被告人が恐喝罪の懲役刑が確定する前に犯した罪なので、被告人が受刑中であっても執行猶予をつけることができました。
 日本の刑法では、前に禁固以上の刑に処されたことがない者、または前に禁固以上の刑に処されたことがあってもその執行を終わった日から5年以内に禁固以上の刑に処されたことがない者は、刑の全部の執行を猶予することができると規定しているので、条文上は懲役刑に処されたことがある被告人には執行猶予を付けることができないように思えます。
 しかし、判例(最高裁昭和28年6月10日判決)は、同時に審判されていたら刑の執行を猶予することができたという理由で、刑が確定する前に犯した罪については執行猶予を付けることができるとしているので、日本でも執行猶予を付けることができます。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 被告人は、2016年7月21日ごろから現在まで仁川市南区にある仁川拘置所に収監中である者で、2017年3月30日に仁川地方法院で恐喝罪などにより懲役8月を宣告され、2017年11月28日にその判決が確定した。
 被告人は、2017年7月ごろ、上の判決が確定すれば他の矯正施設に移監されることを予想し、従来ソウル東部拘置所の同じ部屋で収容生活をして知り合ったBに依頼し、ソウル城北区にある被告人の住居地と近いソウル北部地方検察庁に自分を虚偽事実で告訴させることにした。
 被告人は、2017年7月18日ごろ、仁川拘置所の接見室でBに「兄さん、事件を作ってソウル北部地方検察庁に俺を告訴してくれ。移監しなきゃ」と依頼し、上の日時ごろ、仁川拘置所で詐欺事件の告訴時に一緒に提出する支払履行覚書を作成してから、妻をとおしてBに交付して、Bをして捜査機関に被告人を虚偽告訴させるようにした。
 そうしてBは2017年8月初めごろ、ソウル東大門区の行政書士事務所で「被告人であるAは、2016年3月12日ごろ、告訴人Bに2016年12月末までに弁済する条件で、被告訴人の妻が運営するカラオケボックスの修理費用として1000万ウォンを借りて、支払履行覚書を作成したが、これまで上の1000万ウォンを返済しないので、被告訴人を詐欺罪で処罰してほしい」という内容の告訴状を作成し、2017年8月16日ごろ、ソウル道峰区にあるソウル北部地方検察庁の民願室に上の告訴状を郵便で送った。
 しかし、事実は、被告人はBから被告人の妻が運営するカラオケボックスの修理費用の名目で1000万ウォンを借りた事実はなかった。
 被告人は、上のようにBに被告人をして刑事処分を受けさせることを目的に公務所に虚偽の事実を申告するように教唆した。
 

 

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