2018年5月23日水曜日

ビザ発給拒否処分の取消を求めることができるか(大法院2018年5月15日判決)

 本件は、原告が配偶者ビザ(F-6)の申請が拒否されたのに対して拒否処分の取消訴訟を提起したところ、そもそも原告に訴訟を提起する資格があるかどうかが問題となりました。
 これについて、原審は申請者である原告には当然に取消訴訟を提起する資格があるとしました。しかし、大法院はビザ発給拒否の取消を求める訴訟は、結局のところ韓国に入国させてほしいという主張であるが、外国人には韓国に入国する自由がないので、韓国の裁判所に韓国に入国することを認めてほしいという訴訟を提起する資格がないとし、訴訟そのものを却下しました。
 外国人に入国を求める権利がないというのはどの国でもそうなのかもしれませんが、外国で仕事をするためにビザを申請していた立場としては、ビザが発給されなかったときに争うこともできずに諦めなければならないというのは、なかなか納得できません。
 また、日本でも外国人を雇用しようとしていた会社が就労ビザの発給を拒否されたことでその取り消しを求めて訴訟を提起したものがありますが(東京地裁2010年7月8日判決)、この裁判では原告適格ではなく処分性が争点となり、ビザの発給拒否処分は行政処分に当たらないとして取消訴訟を却下しています。
 ビザは入国許可証ではなく、入国するための書類の一つにすぎないので、ビザの発給が行政処分に当たらないという理屈は分かりますが、ビザが発給されなければ入国も認められないので、ビザの発給の拒否処分を争えなければ申請者は保護されません。
 しかし、そもそも外国人は入国する権利がないのだから裁判所に入国を認めるように裁判を提起することができず、そうすると行政処分でないビザの発給に処分性を認める意味がないということなのかもしれません。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 行政処分に対する取消訴訟で原告適格があるかどうかは、当該処分の相手方であるかどうかにしたがって決定されるのではなく、その取り消しを求める法律上の利益があるかどうかにしたがって決定されるものである。ここで法律上の利益とは当該処分の根拠法律によって保護される直接的で具体的な利益がある場合をいい、間接的であったり、事実的、経済的利害関係をもつにすぎない場合は含まれない。
 旧出入国管理法は外国人が入国するときには原則的に有効な旅券と大韓民国の法務部長官が発給した査証を持っていなければならず、入国する出入国港で出入国管理公務員の入国審査を受けなければならないと規定してる。したがって、外国人が既に査証を発給されている場合にも出入国港で入国審査が免除されていない。査証の発給は外国人に大韓民国に入国する権利を付与したり入国を保障する完全な意味で入国許可決定でなく、外国人が大韓民国に入国するための予備条件ないし入国許可の推薦としての性質を持っているというのが妥当である。
 一方、出入国管理法は、入国しようとする外国人は大統領令で定める在留資格をもっていなければならず、査証の発給に関する基準と手続きは法務部令で定めると規定している。その委任に従って出入国管理法施行令第12条別表1は外国人の多様な在留資格を規定しながら、そのうち結婚移民(F-6)在留資格を「国民の配偶者」、「国民と婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)から出生した子女を養育している父または母であって、法務部長官が認める者」、「国民の配偶者と婚姻した状態で国内で在留していたときにその配偶者の死亡や失踪、その他の自己の責に帰すことができない事由で正常的な婚姻関係を維持することができない者であって法務部長官が認める者」と規定している。ところで、外国人には入国の自由を認めないことが世界各国の一般的な立法態度である。そして、我が国の出入国管理法の立法目的は「大韓民国に入国したり、大韓民国から出国するすべての国民および外国人の出入国管理をとおした安全な国境管理と大韓民国に在留する外国人の在留管理および難民の認定手続きなどに関する事項を規定」するものである。在留資格および査証発給の基準と手続に関する出入国管理法とその下位法令の上のような規定は、大韓民国の出入国秩序と国境管理という公益を保護しようという趣旨のみで、外国人に大韓民国に入国する権利を保障したり大韓民国に入国しようとする外国人の私益まで保護しようという趣旨と解釈することは難しい。
 査証発給拒否処分を争う外国人は、いまだ大韓民国に入国していない状態で大韓民国に入国させてほしいという主張するもので、大韓民国の事実的関連性ないし大韓民国で法的に保護価値のある利害関係を形成した場合ではないので、該当処分の取消を求める法律上の利益を認めなければならない法政策的必要性も大きくない。反面、国籍法上の帰化不許可処分や出入国管理法上の在留資格変更不許可処分、強制退去命令などを争う外国人は大韓民国に適法に入国して相当な期間を在留した者なので、すでに大韓民国との実質的関連性ないし大韓民国で法的に保護価値のある利害関係を形成した場合なので、該当処分の取消を求める法律上の利益が認められるといわなければならない。
 更に、中華人民共和国(以下、「中国」という)出入境管理法第36条などは、外国人が査証発給拒否など出入国に関連する諸般の決定に対して不服できないように明文の規定を置いているので、国際法の相互主義原則上、大韓民国が中国国籍者に我が国の出入国管理行政庁の査証発給拒否に対して行政訴訟を提起することを許容する責務を負っているということはできない。
 このような査証発給の法的性質、出入国管理法の立法目的、査証発給申請人の大韓民国との実質的関連性、相互主義原則などを考慮すると、我が国の出入国管理法の解釈上、外国人には査証発給拒否処分の取消を求める法律上の利益が認められないというのが妥当である。

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