2018年1月17日水曜日

遺体が間違って火葬されたことに対する損害賠償請求(蔚山地方法院2017年11月16日)

 韓国は今では火葬が増えていますが、ついこないだまで土葬文化でした。本件は、土葬した遺体を掘り返して火葬にし、別の墓地に移葬しようとしたときに、間違って他人の遺体を火葬してしまったという事例です。
 火葬をしている日本では考えられない、韓国ならではの事件だと思いました。
 本件は、損害賠償請求のほかに遺骨が原告の父であることの確認を求める訴訟が提起されています。裁判所は原告が移葬するために遺骨が原告の父であることの確認を求める利益があると判示しましたが、遺骨が原告の父であったとしても直ちに原告が遺骨の所有権を取得するものではなく、埋葬する権利が認められるわけではないので、遺骨が原告の父であるという事実の確認を求めても事案の解決には至らないので確認の利益が認められないのではないかと思いました。
 また、自分の親の遺体を間違って火葬されたことに対する慰謝料が150万円というのは少し安すぎるのではないかと思いました。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 原告は、2001年1月15日に被告財団と亡Eの墳墓に関して墓地使用契約を締結し、2001年1月17日に亡Eを安置した事実、被告Cは2016年6月13日に亡Eの墳墓を亡Dの墳墓と誤認して墳墓を改装し遺骨を火葬した後国立○○顕忠院に移葬した事実は先にみたところと同じであり、国立○○顕忠院の亡D墓に安置された遺骨は亡Eの遺骨である。
 ところで、前に見た各証拠に弁論全体の趣旨を加えて分かる次のような事情、即ち①亡Eの墳墓を改装して遺骨を火葬した後に移葬したことに対する責任を巡って当事者らの間に紛争がある点、②原告としては速やかに亡Eの遺骨を再び移葬する必要があるが、被告Cと適時に連絡が付かないので、国立○○顕忠院の亡D墓に安置されている遺骨が亡Eの遺骨であることの確認を受けることが原告の法律上の地位の不安、危険を除去するのに最も有効、適切な手段である点などに照らしてみると、確認を求める利益もある。
 被告財団は墓地使用契約に基づいて墳墓の改装と移葬時に墳墓の権利者が合っているのか、申告した墓地を改装するのかなどに関して直接確認、監督しなければならない注意義務がある。
 それにもかかわらず、被告財団は2016年6月13日に被告Cが亡Dの墳墓を撮影した写真を見せると改装申告証の発給に必要な書類のみ作成しただけで、墳墓を改装するときに申告した墳墓を改装するのかなどに関して直接確認、監督しなかった。
 被告Cは亡Dの墳墓及び墓地番号をきちんと確認してから改装及び移葬しなければならないにもかかわらずこれを怠り、亡Eの墳墓を改装して遺骨を火葬してから移葬した過ちが認められる。
 亡Eの墳墓は原告の父の墳墓である点、被告Cが亡Eの遺骨を火葬したことで遺骨が毀損した点、被告Cが亡Eの墳墓を故意に改装したものではない点など原告と亡Eの関係、原告が被った苦痛の程度、被告Cが墳墓を改装した経緯など斟酌し、慰謝料の額を1500万ウォンと定める。

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