2017年12月11日月曜日

映画館は視覚障碍者のために音声ガイドを提供する義務があるか(ソウル中央地方法院2017年12月7日判決)

 本件は、視覚障碍者や聴覚障碍者である原告らが映画館に対して字幕や音声ガイドの提供を求めたのに対し、裁判所が障碍者差別禁止法にもとづいて字幕や音声ガイドを提供する必要があると認めたものです。ただし、これは映画館が配給会社などから字幕ファイルや音声ガイドファイルを提供されており、字幕や音声ガイドを提供しようと思えば提供できた事案なので、常に映画館が字幕や音声ガイドを提供する義務があると認めたものではありません。
 日本では、平成28年から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行されましたが、事業者が差別を解消するための合理的配慮をすることは努力義務にとどまっているので、日本で同じような裁判が起こされたとしても原告の請求が認められるのは難しいと思われます。
 もっとも、映画に関する障害者差別の取り組みとしてはスマホのアプリを利用した音声ガイドシステムが作られたり、大手配給会社が邦画で音声ガイド付きの上映を促進することにしたなど、少しずつですが行われているようです。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 障害者差別禁止法はすべての生活領域で障碍を理由にした差別を禁止し、障碍を理由に差別を受けている者の権利利益を効果的に救済するために制定された。同法は正当な事由なく障碍者に対して正当な便宜の提供を拒否する場合を差別行為と規定し、これを禁止しているが、同法第21条第1項は情報接近利用可能性の側面から、第24条第2項は文化、芸術活動の参与の側面から上のような趣旨を具体化したものに過ぎない。上のような障害者差別禁止法の制定目的、規定の趣旨や形式を考慮すると、同法第21条第1項、同法施行令第14条第2項、同法第24条第2項、同法施行令第15条第2項で定める必要な手段および正当な便宜の具体的な内容は例示的なものといわなければならない。また、必要な手段および正当な便宜の提供を通して達成しようとする究極的な目的は障碍者に障碍者でない者と同じ水準の情報の接近利用、文化芸術活動の参与を保障することなので、上の条項で定めた必要な手段および正当な便宜には映画観覧を手助けするための施設的側面の手段や便宜だけでなく、映画それ自体の理解を手助けするための手段や便宜も含まれるといわなければならない。
 障碍者でない者と同じ水準で映画を理解するためには視覚障碍者には画面解説、聴覚障碍者には字幕、FM補聴機器などの手段および便宜が提供されなければならない。字幕は障害者差別禁止法第21条第1項、同法施行令第14条第2項第2号に具体的に明示された手段であるだけでなく、これを再生することができる装備は同法第24条第2項、同法施行令第15条第2項で定める「文化芸術活動などを補助するための装備または機器」にも該当する。画面解説、FM補聴機器は同法第21条第1項、同法施行令第14条第2項第2号で定める「これに相応する手段」であり、画面解説を再生することができる装備、FM補聴機器は同法第24条第2項、同法施行令第15条第2項で定める「文化芸術活動を補助するための装備および機器」にも該当する。
 被告らは、映画を上映するにおいて画面解説、字幕、FM補聴機器を提供せず、障碍者である原告らが身体的、技術的条件と関係なく映画関連情報を得ることができるウェブサイトを構築せず、映画上映館で原告らに電子資料、大きな活字に拡大された文書、韓国手話通訳も提供しなかった。
 したがって、画面解説または字幕ファイルを提供する映画に関して視覚障碍者である原告A、Bに画面解説を、聴覚障碍者である原告Cに字幕、FM補聴機器を、聴覚言語障碍者である原告Dに字幕を提供すること、原告らが映画および映画館に関する情報に接近できるようにウェブサイトを通して原告らに画面解説または字幕を提供する映画と映画関連情報(上映館、上映時間)およびその他障碍者に提供できる便宜の内容を提供し、映画上映館で視覚障碍者である原告A、Bに点字資料または大きな活字に拡大された文書を、聴覚障碍者である原告C、聴覚言語障碍者であるDに韓国手話通訳または文字による情報を提供することを求める原告の請求を受け入れることにした。

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