2017年12月4日月曜日

製造物責任の欠陥の立証の程度(ソウル西部地方法院2017年11月28日)

 本件は、会社で使用していた梯子の脚が突然折れて従業員が怪我をしたので会社が従業員に損害賠償金を支払ったことから、この会社が梯子の製造会社に求償するために製造物責任に基づく損害賠償を請求したものです。
 製造物責任を追及するためには製造物に欠陥があることを原告が証明しなければなりませんが、欠陥を具体的に証明することは難しいので、消費者保護の観点から欠陥の立証の程度を緩和すべきとされていました。
 日本では、東京地裁2012年1月30日判決において、「欠陥の意義、法の趣旨が被害者保護にあることなどに照らすと、原告は欠陥の存在を主張、立証するために、当該製造物を適正な使用方法で使用していたにもかかわらず、通常予想できない事故が発生したことを主張、立証することで足り、それ以上に欠陥の部位やその態様等を特定した上で、自己が発生するに至った科学的機序まで主張立証すべき責任を負うものではないと解するのが相当である」とし、「普通に使っていたらあり得ない事故が発生した」ことを証明すればよいとしました。
 本件は、原告が「普通に使っていたらあり得ない事故が発生した」ことを証明し、被告が「欠陥以外の原因で事故が発生した」ことを証明できなければ、製造物に欠陥があることを認定するとしましたが、これは、原告が欠陥の評価根拠事実を主張立証し、被告が欠陥の評価障害事実を主張立証しなければならないと判示したと解釈でき、製造物の欠陥を一般の過失のように理解しているものと思われます。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 物品を製造、販売する製造業者は、その製品の構造、品質、性能などにおいてその流通当時の技術水準と経済性に照らして期待可能な範囲内の安全性と耐久性をもつ製品を製造、販売しなければならない責任があり、このような安全性と耐久性をもっていない欠陥によって消費者に損害が発生した場合には不法行為による損害賠償義務を負担する。一方、高度の技術が集約されて大量に生産される製品の欠陥を理由にその製造業者に損害賠償責任を負わせる場合、その製品の生産過程は専門家である製造業者のみが知ることができ、その製品にどのような欠陥が存在しているのか、その欠陥によって損害が発生したのかについては一般人としては明らかにすることができない特殊性があるため消費者側が製品の欠陥およびその欠陥と損害発生の間の因果関係を科学的、技術的に立証するというのはかならい難しいので、その製品が正常的な使用される状態で事故が発生した場合、消費者側でその事故が製造業者の排他的支配下にある領域で発生したという点と、その事故が誰かの過失なくては通常発生しないという事情を証明すれば、その事故が製品の欠陥でなく他の原因によって発生したことであることを証明できない以上、その製品に欠陥が存在し、その欠陥によって事故が発生したと推定して損害賠償責任を負わせることができるように立証責任を緩和することが損害の公平、妥当な負担をその指導原理とする損害賠償制度の理想に符合する。

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