2017年12月1日金曜日

外貨債権をウォン貨で請求したあとに為替相場が変動した場合どうするか(ソウル西部地方法院2017年11月22日判決)

 例えば韓国の会社と取引を行う際に売買代金をウォン貨で定めた場合、もし日本で裁判になったときは、ウォン貨で請求されたとしても日本円で払ってもよいと民法403条で定めています。これを代用給付と言います。代用給付が認められる場合の為替相場の基準日については、日本においても事実審の弁論終結日とされています(最高裁1975年7月15日判決)。
 本件は、韓国の裁判所で売買代金をドル貨で定めていたものをウォン貨に換算して請求していたのですが、為替相場が変動して当初の請求額を認めると本来の債権額を上回ってしまうことになったため、実際は請求の全部を認容しているのですが、判決としては請求の一部認容としたものです。
 本件は当初の請求額が本来の債権額を上回ったので一部認容ということになりましたが、この理屈によると、為替相場によっては当初の請求額が本来の債権額を下回ることがあるので、その場合は、あくまでもウォン貨によって請求されたものとして一部請求とみなして残りの追加請求を認めることになりそうです。そうすると、次の裁判の途中で為替相場が変動して前の裁判で認められた金額で本来の債権額を満たすとすると、前の裁判では残りの金額があると認めながら、次の裁判では残りの金額がないということになり、気持ちが悪いです。
 なお、韓国では「訴訟促進等に関する特例法」という法律があり、遅延損害金の法定利率を訴状が送達された翌日からは15%と定められています。日本で裁判をした場合であっても韓国法が適用される場合は遅延損害金の利率も15%となるので注意が必要です。
 以下は、判決の一部抜粋です。

 債権者が代用給付の権利を行使して外貨債権を我が国の通貨に換算して請求する場合、裁判所は債権者が請求の趣旨で求める金額の範囲内で債務者が現実に履行する時に最も近い事実審の弁論終結当時を我が国の通貨に換算する基準時としてその当時の為替相場をもとに債権額を改めて換算した金額について履行を命じなければならない。
 原告は、本件各売買代金債権など外貨債権を我が国の通貨に換算して請求しており、本件弁論終結日である2017年11月1日基準の1ドル当たり為替レートが1125.90ウォンであることは公知の事実であるので、被告は原告に未払いの売買代金1億6628万2054ウォン(1ウォン未満は切り捨て、以下同じ)と本件各売買代金に対する各弁済日または2017年10月27日までの確定遅延損害金4122万8386ウォンの合計2億751万440ウォンおよびそのうち下記表の金額欄記載の各該当金額について同表の遅延損害金加算日欄記載の各該当日から被告がその履行義務の存在有無や範囲について争うことが妥当であると認められるこの判決宣告日である2017年11月22日までは商法が定める年6%、その翌日から返済が終わる日までは訴訟促進などに関する特例法に定める年15%の各比率で計算した遅延損害金を支払う義務がある。

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