2018年5月29日火曜日

製作物供給契約に基づく代金請求権の消滅時効の起算点(大邱高等法院2018年5月11日判決)

 本件は充電器5000個を製作した会社から代金請求権を譲り受けた原告が、契約の相手方である被告に対して代金の支払いを求めたものです。
 被告は本件契約は売買契約なので売買代金の請求権の消滅時効の起算点は契約時である2014年5月7日であるとし、短期消滅時効である3年が経過しているので代金を支払う義務がないとしました。
 これに対し、裁判所は、製作物供給契約の性質は契約の目的物が代替物であれば売買契約、不代替物であれば請負契約の性質を持つとし、本件契約の目的物は不代替物なので請負契約であり、目的物が完成した2016年1月12日が起算点となるとしました。そして、短期消滅時効が成立する前に訴訟を提起しているので、代金は時効により消滅していないとしました。
 製作物供給契約の性質についてはいろいろな学説がありますが、目的物の瑕疵担保の問題として売買なのか請負なのかが問題になっていたようです。というのも、代金をいつ支払うかついては普通は契約書に書かれているので、代金請求権の消滅時効の起算点が問題になることはないからです。本件は代金の支払い日が決められていなかったことから、売買か請負かによって代金を請求できる時期が変わってくるので、製作物供給契約の性質をどのように考えるかを裁判所が判断しました。
 以下は、判示の一部抜粋です。

 被告は、本件充電器の代金請求債権は「生産者および商人が販売した生産物および商品の代価」として民法第163条第6号によって消滅時効期間が3年で、被告がJに本件充電器の製作供給を発注した2014年5月7日から消滅時効期間が進行するが、Jが被告に債権譲渡を通知した2017年11月21日当時に3年の消滅時効期間が経過して本件充電器の代金債権は時効によって消滅していたと主張する。
 当事者の一方が相手方の注文によって自己の所有の材料を使用して作った物を供給することにし、相手方が対価を支払うことを約束するいわゆる製作物供給契約は、その製作の側面からは請負の性質があり、供給の側面からは売買の性質があり、ほとんどは売買と請負の性質を一緒に持っているので、その適用法律は契約によって製作供給しなければならない物が代替物である場合には売買に関する規定が適用されるが、物が特定の注文者の需要を満足させるための不代替物である場合には当該物の供給とともにその製作が契約の主目的となる請負の性質を帯びるようになる。工事請負契約で消滅時効の起算点となる報酬請求権の支払時期は、当事者の間に特約があればそれに従い、特約がなければ慣習によって、特約や慣習がなければ工事を終わらせた時といわなければならない。
 上の認定事実によると、被告がJとの間に締結した本件充電器の製作供給契約は不代替物の製作供給契約といえるので、これは請負契約に該当するといえ、本件充電器の代金債権の消滅時効は製作完了日から起算しなければならない。
 甲第16号証の3、甲第17号証の各記載に弁論全体の趣旨を総合すると、被告は2016年1月11日にJに本件充電器のファームウエアを修正しなければならないと無線充電器4個をKに送ってくれと要請した事実、被告の要請に従って原告は2016年1月12日にKに無線充電器4個を交付した事実が認められるので、本件充電器5000個の製作が完了した時期は2016年1月12日ごろというのが妥当で、したがって、Jが被告に対して取得した本件充電器の代金請求権の消滅時効は2016年1月12日ごろから起算しなければならないが、その時から起算して3年になる前に原告が当審で予備的請求として譲受金請求を追加した事実はこの裁判所に顕著なので被告の主張は理由がない。

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