2017年10月31日火曜日

無罪とされた教師の性的暴行を有罪と判断した判決(大法院2017年7月18日)

 原審で故意が認定できないとして無罪と判断したのに対し、大法院で有罪と判断した判例です。以下は、大法院が被告人の行為が性的暴行にあたると判断した部分です。
 被告人と被害者らの性別、年齢及び被告人と被害者らとの関係、被告人が行為に至った経緯、具体的な行為態様、被告に野行為が被害者らに及ぼした影響などを上に見た法理に照らしてみると、たとえ被告人が教務室、教室、廊下など開放された空間で学生らと親密感を高めようという意図で上のような行為をしたと主張したとしても、身体的に成熟した15歳ないし16歳の女学生である被害者らの腰の部位に手を回したり、おしりの上部分をつついたり、手を握って触ったり、手の甲をなでたりなどの行為は客観的に親しい関係を重ねるための行為といいがたく、一般人に羞恥心や嫌悪感を生じさせ、善良な性的道徳観に反する行為として被害者らの性的自由を侵害するものと評価することができる。

2017年10月27日金曜日

自動車の修理後の評価損を認めた判決(大法院2017年6月29日判決)

事故により自動車が破損した場合、修理をしても交換価値が減少して評価損が発生することがあります。この評価損が損害賠償の対象なるかということが争われた裁判です。 
 自動車が事故によりエンジンや車体の主要な骨格部位などが破損する重大な損傷を負う場合には、これを修理して車両の外観や平素の運行のための機能的・技術的な復旧を終わらせたとしても、それによって完全な原状回復がされたとはいいがたい場合が生じる。事故の程度や破損部位などによっては修理後にも外部の衝撃を吸収、分散する安定性や腐食に耐える耐食性が低下し、車体強度の弱化や修理部位の腐食または騒音・振動の発生などによって使用期間が短縮されたり故障発生率が高くなるなどの使用上の欠陥や障害が残存・潜伏する蓋然性があるからである。
 それゆえ、自動車の主要骨格部位が破損するなどの事由により重大な損傷がある事故が発生した場合には、技術的に可能が修理を終わらせたとしても特別な事情がない限り、原状回復がされない修理不可能な部分が残るとするのが経験則に符合し、それによる自動車の価格下落の損害は通常の損害に該当すると言わなければならない。
 それにもかかわらず、修理可能性を主な理由として交換価値の減少による損害賠償請求を排斥したので、このような原審の判断には自動車の交換価値下落および損害発生の範囲などに関する法理を誤り必要な審理を尽くさず、判決に影響を及ぼす誤りがある。
 

2017年10月25日水曜日

多発性硬化症が労災認定された事例(大法院2017年8月29日判決)

 サムスン電子のLCDパネル工場の労働者が多発性硬化症に発症したとして労災を申請したところ、勤労福祉公団が労災を認めなったのに対し、日本の最高裁にあたる大法院は業務との間に相当因果関係があるとして労災を認めました。大法院が労災を認めた判例は以前にもありましたが、今年829日に出た分について相当因果関係を認めた理由を紹介します。
 
1、原告の業務全体のうち有機溶剤を取り扱っていた作業が占める割合は低かったが、43ヶ月毎日この作業を行っていた点から累積された露出の程度が低いとは断定しがたい。また、原告が直接作業したものではないが、作業場全体の構造から隣接した工場から発生する有害化学物質が伝播、拡散されて原告もこれに露出されたとみられる。
 原告の業務と疾病の間の相当因果関係を判断するときは、疫学調査の方式自体に限界があるうえ、事業主などが有害化学物質などに関する情報を公開しなかった点も考慮しなければならない。

2017年10月24日火曜日

 はじめまして。弁護士の石井と申します。韓国語の翻訳の仕事をしていた経験を活かし、韓国の裁判例を紹介しようとブログを開くことにしました。
 韓国の裁判例を見ていると、日本と同じような判断をしていることが多いのですが、日本よりも人権を尊重した判断をしているものも散見されます。外国の裁判例なので直ちに日本の裁判に影響を与えるものではありませんが、どのような判断過程を経たのかを参考にすることはできると思います。
 一方で「へぇー」と思うだけの韓国ならではの裁判例もありますので、自分で興味を感じた裁判例を徒然なるままに紹介していきたいと思います。