tag:blogger.com,1999:blog-32682430521276009612024-03-13T20:38:55.733+09:00韓国の裁判を翻訳する弁護士のブログ個人的に気になった韓国の最新判例を紹介するブログです。石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.comBlogger70125tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-10883197346905316662018-06-04T20:02:00.000+09:002018-06-04T20:02:52.937+09:00韓国で生まれ育った外国人を強制退去させることの是非(清州地方法院2018年5月17日判決) 本件は、ナイジェリア人の両親が在留資格を喪失したことで、家族同伴ビザで在留していた原告の在留資格を失った原告が、在留資格がないにもかかわらず仕事をしていたという理由で強制退去命令を受けたものです。<br />
原告は、国籍はナイジェリア人ですが韓国で生まれ育ち、韓国語以外は話せないという事情があり、国外追放になると生活することができないことから強制退去命令の取消を求めていました。<br />
出入国管理局は、原告の強制退去命令の取消を認めると他の不法滞在者にも在留資格を与えなければならなくなると主張しましたが、裁判所は韓国で生まれ育った原告に在留資格を認めないことが韓国国民の保護に資するとはいえないだけでなく、原告の人権を保障する観点から強制退去は違法であるとしました。<br />
法律を厳密に適用すると外国籍しかない者が在留資格を持っていないのであれが国外退去を命じなければならないのかもしれませんが、その国で生まれ育ち、その国の言葉しか話せない者に国外退去を命じることは、やはり人道的な点から許されないと思われます。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、大韓民国で出生して大韓民国の教科過程を履修して成長し、主な言語として韓国語を使用しながら、他の国には出国したり居住したことがない。すなわち、原告は国籍に関して俗人主義を採択した現行法律上我が国の国籍を取得することができないが、大韓民国の言語、風習、文化、生活環境などでそのイデオロギーを形成してきて、その経済的、社会的、文化的基盤は韓国にのみ形成されているものである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、原告はその国籍であるナイジェリアの固有言語さえ使用できないだけでなく、ナイジェリアには一度も訪問したことがなく、そこに居住する親戚も一度もあったことがない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 先に記載したところのように「強制退去命令は反社会性をもつ外国人から我が国の国民を保護するための公益的目的を達成するためのもの」という観点から見ると、原告はこれに該当しないといえる余地が大きい。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 何よりも原告の不法滞在状態は彼の帰責事由によって惹起されたものではないという点が考慮されなければならない。すなわち、原告が不法滞在状態になったのは、両親の在留資格はく奪による従属的な効果に起因するだけで、原告が自ら不法を犯したせいではない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> もちろん原告の不法滞在及びそのような状況での不法就労自体を反社会的と評価する余地がないわけではないが、上のような原告の不法滞在や不法就労の期間、動機、背景、情況、違反の程度、原告が他の場所でもない大韓民国で生まれてここで、小中高校の過程をすべて履修して韓国社会の構成員として活動するのに必要な規範や知識、文化を習得してきた点などを考慮すると、本件でただ不法滞在、不法就労の事実のみをもって原告に「反社会性」があると烙印を押すことは過度な側面が存在し、その延長線で上の法理上の「韓国国民の保護の必要性」もまた顕著に低いという他はない事案である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> より根本的には、本件原告のように適法に大韓民国で出生したが、その両親が在留資格を喪失したことで在留資格を失った者に対する人権的、人道的、経済的観点からの典型的なアクセスが必要である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> まず、原告のように大韓民国で出生して現在まで事実上ただ大韓民国のみをその地域的、社会的土台として生きてきた者をとにかく他の国へ出て行けと追い出すことは、人間の尊厳性を守護し、生存権を保障しなければならない文明国家の憲法精神に反する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 特に、国家間の交流活性化として外国人労働者と留学生が多く流入し、これによって正しい多文化社会の正立または国家的課題として台頭するようになった現時点ではよりそうである。外国人であったとしても大韓民国社会内で普遍的人権の主体であり、経済的、社会的、文化的生活の主体としての人格を保障することで究極的な社会統合を図る必要性があり、出入国管理行政で考慮しなければならない公益的価値に国家の安全保障だけでなく、外国人の人権と社会統合という価値も大切に取り扱うようにならなければならない必要性があるといえる。すなわち、大韓民国は国内で社会的基盤を形成した原告をして人間らしい生活を享有し、国内に滞在できるようにその基本的人権を保障する義務があるといわなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> さらに、大韓民国で小中高校の正規教科過程をすべて理由した原告を強制的に追い出すことは我が国の立場からも経済的、人的被害を負うことと異なるところがない。すなわち、先に言及したところのように12年の正規教育課程をとおして韓国社会構成員として十分に役割を果たすことができるように成長した原告を今になって追い出すのはそれに投資した時間と費用、努力を勘案すると大きな損失というほかないためである。今後、韓国政府が原告のような事案で国籍まではそうでないとしても在留資格を付与することができるように法を作る必要性が大きいと考えられるのはそのためである。すなわち、とにかく追い出すよりはどうにかして原告を活用して韓国社会に加えるようにするアクセスが必要である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告は、本件で原告の請求を受け入れると今後多くの不法滞在者について在留資格を付与するようになる状況が発生すると主張し、その主張の内容に耳を傾ける部分がなくはないが、これまで現実化していないそのような仮定的な憂慮のみで本件で保護されなければならない原告の基本的人権を無視することはできず、被告の主張のそのような憂慮は出入国行政や関連法令の補完、整備などをとおして相当部分解決することができる可能性が十分に存在する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上のように本件強制退去命令は違法なので、本件強制退去命令が適法であることを前提とする本件保護命令も当然に違法である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> そうすると、原告の請求は理由があるので、これを認容することにし、主文のように判決する。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-74251388858997989872018-05-31T12:29:00.000+09:002018-05-31T12:29:57.328+09:00山で自生しているシイタケを採ると罪になるか(大邱高等法院2018年5月11日判決) 本件は、被告人が他人が所有する山に自生するシイタケ(890グラム相当)を採って帰ろうとしたことが山林資源法違反に当たるとして30万ウォンの罰金を命じられたことを不服とし、控訴したものです。<br />
被告には、山林資源法は自生する産物を持って帰ることまで処罰の対象にしていないと主張しましたが、裁判所は人為的に栽培しているか自生しているかにかかわらず他人の山から産物をもってかえることは山林資源法第73条第1項の処罰対象になるとしました。<br />
他人の山から自生しているキノコなどを持ってかえる行為は森林窃盗といい、日本では森林法第197条で3年以下の懲役または30万円以下の罰金と定められています。これは窃盗罪の一種ですが、山で生えている植物などは持って帰りやすいなどの理由で窃盗罪に比べて軽い刑となっています。<br />
これに対し、韓国では森林窃盗は5年以下の懲役または5000万ウォン以下の罰金となっており、窃盗罪(6年以下の懲役または1000万ウォン以下の罰金)とあまり変わりがなく、結構重い罪になっています。<br />
本件では被告人は30万ウォンの罰金が重すぎるとも主張しているようですが、山に入れないようにしている冊を乗り越えてシイタケを取っているという点を裁判所は重く見て、罰金の額を決めたようです。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: "ms 明朝"; font-size: 10.5000pt;"> </span><span style="font-family: inherit;">控訴理由の要旨は、山林資源の助成及び管理に関する法律(以下、「山林資源法」という)は、栽培や管理されている産物に対する財産権を保護するためのものなので、山林から管理されていない自生する産物を持っていったことは処罰することができない。そして、被告人は採取したキノコをかばんに入れてしばらく歩きまわっていただけで窃取の既遂に至ったものではないというものである。<o:p></o:p></span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 山林資源法の目的は、山林資源の助成と管理をとおして山林の多様な機能を発揮するようにし、山林の持続可能な保全と利用を図ることで、国土の保全、国家経済の発展および国民の生活の質の向上に寄与しようというもので、人為的に栽培、管理される山林資源に対する助成管理に限定されない点、犯罪事実に対する該当法条である山林資源法第73条第1項では「山林からその産物を窃取する行為」を処罰しており、この規定には人為的に栽培、管理される産物に限定するという規定がない点、「山林」は「集団的に育っている立木、竹とその土地」で、自然的か人為的かに関係なく集団的に育っている立木とその土地はすべて「山林」に該当するといえる点を考慮すると、自生する立木から自生する産物も上の処罰規定の窃取の対象になるというのが妥当である。したがって、被告人の上の主張は理由がない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 窃盗罪は他人の所持を侵害して財物がいこの所持に移動するとき、すなわち自己の事実的支配下に置いたときに既遂となるというもので、原審が適法に採択して調査した証拠によると、被告人はシイタケを採取してかばんに入れた状態で墓地に向かって歩き続けており、シイタケを被告人の事実的支配下に置いていた点が認められ、これを上の法理に照らしてみると既に窃盗の既遂に至ったものといえる。したがって、被告人の上の主張は理由がない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-54903692463940078152018-05-29T17:12:00.000+09:002018-05-29T17:12:56.738+09:00製作物供給契約に基づく代金請求権の消滅時効の起算点(大邱高等法院2018年5月11日判決) 本件は充電器5000個を製作した会社から代金請求権を譲り受けた原告が、契約の相手方である被告に対して代金の支払いを求めたものです。<br />
被告は本件契約は売買契約なので売買代金の請求権の消滅時効の起算点は契約時である2014年5月7日であるとし、短期消滅時効である3年が経過しているので代金を支払う義務がないとしました。<br />
これに対し、裁判所は、製作物供給契約の性質は契約の目的物が代替物であれば売買契約、不代替物であれば請負契約の性質を持つとし、本件契約の目的物は不代替物なので請負契約であり、目的物が完成した2016年1月12日が起算点となるとしました。そして、短期消滅時効が成立する前に訴訟を提起しているので、代金は時効により消滅していないとしました。<br />
製作物供給契約の性質についてはいろいろな学説がありますが、目的物の瑕疵担保の問題として売買なのか請負なのかが問題になっていたようです。というのも、代金をいつ支払うかついては普通は契約書に書かれているので、代金請求権の消滅時効の起算点が問題になることはないからです。本件は代金の支払い日が決められていなかったことから、売買か請負かによって代金を請求できる時期が変わってくるので、製作物供給契約の性質をどのように考えるかを裁判所が判断しました。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告は、本件充電器の代金請求債権は「生産者および商人が販売した生産物および商品の代価」として民法第163条第6号によって消滅時効期間が3年で、被告がJに本件充電器の製作供給を発注した2014年5月7日から消滅時効期間が進行するが、Jが被告に債権譲渡を通知した2017年11月21日当時に3年の消滅時効期間が経過して本件充電器の代金債権は時効によって消滅していたと主張する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 当事者の一方が相手方の注文によって自己の所有の材料を使用して作った物を供給することにし、相手方が対価を支払うことを約束するいわゆる製作物供給契約は、その製作の側面からは請負の性質があり、供給の側面からは売買の性質があり、ほとんどは売買と請負の性質を一緒に持っているので、その適用法律は契約によって製作供給しなければならない物が代替物である場合には売買に関する規定が適用されるが、物が特定の注文者の需要を満足させるための不代替物である場合には当該物の供給とともにその製作が契約の主目的となる請負の性質を帯びるようになる。工事請負契約で消滅時効の起算点となる報酬請求権の支払時期は、当事者の間に特約があればそれに従い、特約がなければ慣習によって、特約や慣習がなければ工事を終わらせた時といわなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上の認定事実によると、被告がJとの間に締結した本件充電器の製作供給契約は不代替物の製作供給契約といえるので、これは請負契約に該当するといえ、本件充電器の代金債権の消滅時効は製作完了日から起算しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 甲第16号証の3、甲第17号証の各記載に弁論全体の趣旨を総合すると、被告は2016年1月11日にJに本件充電器のファームウエアを修正しなければならないと無線充電器4個をKに送ってくれと要請した事実、被告の要請に従って原告は2016年1月12日にKに無線充電器4個を交付した事実が認められるので、本件充電器5000個の製作が完了した時期は2016年1月12日ごろというのが妥当で、したがって、Jが被告に対して取得した本件充電器の代金請求権の消滅時効は2016年1月12日ごろから起算しなければならないが、その時から起算して3年になる前に原告が当審で予備的請求として譲受金請求を追加した事実はこの裁判所に顕著なので被告の主張は理由がない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-58902318650533558232018-05-28T13:42:00.000+09:002018-05-28T13:43:27.123+09:00私有地を通らせないことが往来妨害罪になるか(仁川地方法院2018年5月10日〕 本件は私有地を通らせないようにフェンスを設置した行為に対して、往来妨害罪が成立するとして罰金200万ウォンを命じたものです。<br />
これに対し、弁護人はフェンスを立てた土地は被告人が所有する私有地であり、他に通る道があるのだから往来妨害罪は成立しないと主張しましたが、問題となった土地が明日アルトで舗装された道路であり、長い間周辺の住民が道路として使用していたことを根拠として往来妨害罪の成立を認めました。<br />
私有地なのに通ると便利だからという理由で近所の人が勝手に通っているということは珍しいことではなく、そのような場合でも通行量が少なければ所有者もとやかく言わないのですが、開発などが進んで住人が増えて通行量が多くなると私有地だからという理由で通行止めにし、近所の人とトラブルになることがあります。<br />
原則としては土地の所有者は所有権に基づいて勝手に通行できないようにすることができるので、近所の人が慣習的に道路として使っているというだけでは通行止めができないようにすることはできませんが、本件は道路がアスファルトで舗装されているということで何らかの道路として指定されている可能性があり、そうすると私有地だという理由で通行止めにすることはできないと考えられます。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: MS 明朝; font-size: 10.5pt;"> </span><span style="font-family: inherit;">被告人と弁護人は、被告人が鉄筋構造のフェンスを設置した本件土地が個人私有地で、公道に出入りすることができる他の道路が存在するので、これは「陸路」に該当せず、一般交通妨害罪が成立しないという趣旨の主張をしている。刑法第185条の一般交通妨害罪は一般公衆の交通の安全を保護法益とする犯罪で、ここで「陸路」というのは一般公衆の往来に共用されている場所、すなわち特定人に限らず不特定多数人または車馬が自由に通行できる公共性をもつ場所をいい、陸路と認められる以上その敷地の所有関係や通行権利関係または通行人の多少を問わない。検事が提出した証拠を総合すると、被告人が鉄筋構造物のフェンスを設置した土地はたとえ個人の私有地であるとしてもアスファルトで舗装された道路であって、長い間周辺の住民が通行路として利用してきた事実が認められるところ、そうであれば本件土地は「不特定多数人または車馬が自由に通行できる公共性をもった場所」として刑法第185条の「陸路」に該当するというのが妥当である。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-12501888034306226732018-05-23T17:32:00.000+09:002018-05-23T17:32:16.763+09:00ビザ発給拒否処分の取消を求めることができるか(大法院2018年5月15日判決) 本件は、原告が配偶者ビザ(F-6)の申請が拒否されたのに対して拒否処分の取消訴訟を提起したところ、そもそも原告に訴訟を提起する資格があるかどうかが問題となりました。<br />
これについて、原審は申請者である原告には当然に取消訴訟を提起する資格があるとしました。しかし、大法院はビザ発給拒否の取消を求める訴訟は、結局のところ韓国に入国させてほしいという主張であるが、外国人には韓国に入国する自由がないので、韓国の裁判所に韓国に入国することを認めてほしいという訴訟を提起する資格がないとし、訴訟そのものを却下しました。<br />
外国人に入国を求める権利がないというのはどの国でもそうなのかもしれませんが、外国で仕事をするためにビザを申請していた立場としては、ビザが発給されなかったときに争うこともできずに諦めなければならないというのは、なかなか納得できません。<br />
また、日本でも外国人を雇用しようとしていた会社が就労ビザの発給を拒否されたことでその取り消しを求めて訴訟を提起したものがありますが(東京地裁2010年7月8日判決)、この裁判では原告適格ではなく処分性が争点となり、ビザの発給拒否処分は行政処分に当たらないとして取消訴訟を却下しています。<br />
ビザは入国許可証ではなく、入国するための書類の一つにすぎないので、ビザの発給が行政処分に当たらないという理屈は分かりますが、ビザが発給されなければ入国も認められないので、ビザの発給の拒否処分を争えなければ申請者は保護されません。<br />
しかし、そもそも外国人は入国する権利がないのだから裁判所に入国を認めるように裁判を提起することができず、そうすると行政処分でないビザの発給に処分性を認める意味がないということなのかもしれません。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 行政処分に対する取消訴訟で原告適格があるかどうかは、当該処分の相手方であるかどうかにしたがって決定されるのではなく、その取り消しを求める法律上の利益があるかどうかにしたがって決定されるものである。ここで法律上の利益とは当該処分の根拠法律によって保護される直接的で具体的な利益がある場合をいい、間接的であったり、事実的、経済的利害関係をもつにすぎない場合は含まれない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 旧出入国管理法は外国人が入国するときには原則的に有効な旅券と大韓民国の法務部長官が発給した査証を持っていなければならず、入国する出入国港で出入国管理公務員の入国審査を受けなければならないと規定してる。したがって、外国人が既に査証を発給されている場合にも出入国港で入国審査が免除されていない。査証の発給は外国人に大韓民国に入国する権利を付与したり入国を保障する完全な意味で入国許可決定でなく、外国人が大韓民国に入国するための予備条件ないし入国許可の推薦としての性質を持っているというのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、出入国管理法は、入国しようとする外国人は大統領令で定める在留資格をもっていなければならず、査証の発給に関する基準と手続きは法務部令で定めると規定している。その委任に従って出入国管理法施行令第12条別表1は外国人の多様な在留資格を規定しながら、そのうち結婚移民(F-6)在留資格を「国民の配偶者」、「国民と婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)から出生した子女を養育している父または母であって、法務部長官が認める者」、「国民の配偶者と婚姻した状態で国内で在留していたときにその配偶者の死亡や失踪、その他の自己の責に帰すことができない事由で正常的な婚姻関係を維持することができない者であって法務部長官が認める者」と規定している。ところで、外国人には入国の自由を認めないことが世界各国の一般的な立法態度である。そして、我が国の出入国管理法の立法目的は「大韓民国に入国したり、大韓民国から出国するすべての国民および外国人の出入国管理をとおした安全な国境管理と大韓民国に在留する外国人の在留管理および難民の認定手続きなどに関する事項を規定」するものである。在留資格および査証発給の基準と手続に関する出入国管理法とその下位法令の上のような規定は、大韓民国の出入国秩序と国境管理という公益を保護しようという趣旨のみで、外国人に大韓民国に入国する権利を保障したり大韓民国に入国しようとする外国人の私益まで保護しようという趣旨と解釈することは難しい。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 査証発給拒否処分を争う外国人は、いまだ大韓民国に入国していない状態で大韓民国に入国させてほしいという主張するもので、大韓民国の事実的関連性ないし大韓民国で法的に保護価値のある利害関係を形成した場合ではないので、該当処分の取消を求める法律上の利益を認めなければならない法政策的必要性も大きくない。反面、国籍法上の帰化不許可処分や出入国管理法上の在留資格変更不許可処分、強制退去命令などを争う外国人は大韓民国に適法に入国して相当な期間を在留した者なので、すでに大韓民国との実質的関連性ないし大韓民国で法的に保護価値のある利害関係を形成した場合なので、該当処分の取消を求める法律上の利益が認められるといわなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 更に、中華人民共和国(以下、「中国」という)出入境管理法第36条などは、外国人が査証発給拒否など出入国に関連する諸般の決定に対して不服できないように明文の規定を置いているので、国際法の相互主義原則上、大韓民国が中国国籍者に我が国の出入国管理行政庁の査証発給拒否に対して行政訴訟を提起することを許容する責務を負っているということはできない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような査証発給の法的性質、出入国管理法の立法目的、査証発給申請人の大韓民国との実質的関連性、相互主義原則などを考慮すると、我が国の出入国管理法の解釈上、外国人には査証発給拒否処分の取消を求める法律上の利益が認められないというのが妥当である。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-69188897697362263482018-05-18T18:06:00.000+09:002018-05-18T18:06:18.068+09:00緊急措置第9号の罪が違憲無罪となった場合に旧反公法違反で有罪とできるか(大邱地方法院2018年4月25日判決) 本件は、緊急措置第9号が違憲無効とされたことから、無罪の再審を求めたのに対し、観念的競合関係にある旧反公法違反の罪で有罪とすることができるかが争われた事件です。<br />
被告人は、酒に酔った状態で警察官に対して韓国政府を批判し、北朝鮮と統一した方がよいという内容の発言をしたのですが、このことが韓国よりも北朝鮮が優れているという北朝鮮を讃える発言に当たるとして、緊急措置第9号違反で有罪とされていました。<br />
緊急措置とは大統領に与えられた緊急命令権に基づくもので、非常時において大統領の権限で国民の権利を制限することができるものです。緊急措置第9号自体は1979年に解除されていますが、2013年になって初めて緊急措置第9号が違憲無効であると裁判所で判断されました。<br />
一方、反公法とは1961年に制定された法律で、1980年に国家保安法に統合されて廃止されましたが、共産主義団体への加入や共産主義に便宜供与する行為を禁止する法律です。被告人の発言は、緊急措置第9号に違反すると同時に旧反共法にも違反する行為なので、緊急措置第9号が違憲無効であっても、旧反共法で有罪となる可能性がありました。<br />
裁判所は、再審とは公訴事実の有無について審理をするもので、緊急措置第9号の違憲無効が再審事由であるとしても、公訴事実が他の刑法犯に当たるのであれば有罪を認定することができるとしました。しかし、検察が起訴した内容では反共法違反に当たるとは言えないとし、有罪の立証がないとして無罪としました。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件公訴事実は、「被告人が警察官にした発言が流言飛語を捏造、流布すると同時に北朝鮮を讃え、同調して反国家団体を利するようにした」というものであるが、被告人が行った上の行為は一つの行為が数個の罪(緊急措置第9号違反の罪および旧反共法違反の罪)に該当するいわゆる「観念的競合関係」にある。観念的競合は一つの行為で数個の犯罪が実現されるものであるが、これは単に刑罰法規が競合するもので、どこまでも一つの行為に過ぎない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> ところで、再審は有罪の確定判決に対する事実認定の不当を是正する非常救済手続きで、再審裁判所は確定判決の「犯罪事実」について再審を開始するものであって、その事実に対するそれぞれの「法的評価」について再審を開始するものではない。同様に本裁判所が本件に関して再審を開始したのは、被告人に対する上の公訴事実について再審を開始したものであって、緊急措置第9号違反という法的評価について再審を開始したとはいえない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 大法院は「競合犯関係にある数個の犯罪事実を有罪と認定して一つの刑を宣告した確定判決でその一部の犯罪事実についてのみ再審請求の理由があるものと認められる場合には、再審裁判所は再審事由がない犯罪事実の部分について再び審理を経て有罪認定を破棄することができない」と判示している。上の大法院の判決の趣旨は、実体的結合関係にある複数の犯罪事実のうち一部の犯罪事実について再審事由が存在して再審が開始された場合、再審開始決定は形式的には一つの刑が宣告された判決に対するものであって、再審事由がない他の犯罪事実の部分については量刑に関する審理以外に有無罪の実体判断は再び審理して変更することができないというものである。しかし、上の大法院の判決はどこまでも実体的結合犯の関係にある事案についてのもので、厳格に解釈しなければならず、本件のように一つの犯罪事実について数個の犯罪が実現して、その法的評価のみを異にする観念的競合関係にある場合には、上の法理をそのまま適用することができないといわなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 結局、被告人の行為が緊急措置第9号違反の点と同時に旧反共法違反の点で評価されたとしても、本裁判所が本件公訴事実について再審を開始した以上、その審判範囲は当初の再審事由があると判断した緊急措置第9号の点についてのみに限定されるとはいえない。したがって、本裁判所は旧反共法違反の有無罪に関する実態判断についても審理することができるというのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> しかし、上の公訴事実に記載された被告人の発言内容をみると、当時の大韓民国の政治状況など時事的な関心事について個人的な意見を酒に酔った状態で不平を言った程度に過ぎないといえ、被告人が上のような発言をしたという事実のみでは客観的に反国家団体の利益になったり、国家の存立、安全を脅かしたり、自由民主的基本秩序に危害を与える具体的で明白な危険性があったと断定することが難しい。更に、被告人は検察の被疑者尋問の当時「北朝鮮を讃え、宣伝するためにそのように話したのではない」という趣旨の陳述をしている点などに照らしてみると、被告人に主観的に反国家団体に利益を与えるということに対する認識があったといえず、他にこれを認める証拠がない。</span></blockquote>
<div class="MsoNormal">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、この部分の公訴事実のうち旧反共法違反の点は、犯罪事実の証明がない場合に該当する。</span><span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"><o:p></o:p></span></div>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-2275209069239639712018-05-17T18:07:00.000+09:002018-05-17T18:07:14.410+09:00医療ミスで入院が長引いた患者に治療費を請求できるか(大法院2018年4月26日判決) 本件は、医療ミスで患者の入院が長引いたのに対し、病院から患者に対して診療費等の請求がなされたものです。<br />
本件の特殊な事情としては、この患者は医療ミスがあった病院で再手術をし、そのまま入院し続けているということ、医療ミスについては損害賠償請求訴訟を提起し、判決が確定しますが、その訴訟では当然に予想される入院費用の請求をしていなかったということです。<br />
原則としては、患者は病院に対して診療費等を支払わなければならないとしても、その費用は病院から損害賠償として支払われるということになり、結果的に相殺されることになるので、診療費等を支払う必要はありません。しかし、もし、損害賠償請求をしておらず、既判力によって損害賠償請求ができないのであれば、患者は病院に診療費等を支払わなければならないでしょう。<br />
本件では、裁判所は医療ミスを犯した病院が診療を続けるのは損害の填補として当然に行わなければならないものとして、診療を行ったとしても費用を請求することはできないとしました。<br />
結論としては妥当なのかもしれませんが、この理屈で言うと、患者は医療ミスを犯した病院に入院し続けると無料で診療を受けることができるので、診療費等の費用が発生しないということになり、診療費等相当額の損害を請求することができなくなりそうです。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 医師が善良な管理者の注意義務を尽くさなかったせいでかえって患者の身体機能が回復不可能に損傷し、また損傷以降にはその後遺症の治癒またはそれ以上の悪化を防止する程度の治療のみが続けられてきただけであれば、医師の治療行為は診療債務の本旨によるものになりえなかったり、損害填補の一環としてなされたものに過ぎず、病院側としては患者に対してその手術費や治療費の支払いを請求することができない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような法理は患者が特定時点以降に支払うものと予想される今後の治療費を従前の訴訟で十分に請求することができ、実際にこれを請求したとしても、その請求が積極的損害の一部として当然に受け入れられるものであるにもかかわらず、患者が従前の訴訟で該当治療費の請求を漏らした結果、患者がこれを別途の訴訟で請求することが従前の訴訟の確定判決の既判力に抵触し、訴訟法上許されない場合でも患者が従前の訴訟で該当請求を漏らしたことがその請求権を放棄したものと評価することができるなどと特別な事情がない限り、同じように適用される。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告1が2次医療訴訟で2013年以降に発生すると予想される治療費などを請求することができ、実際にこれを請求していれば被告1の生存を条件に認容されていたことが明白である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、被告1が2次医療費訴訟で2013年以降に発生すると予想される治療費などを請求せずに被告1がこれを別途の訴訟で請求することが2次医療訴訟の確定判決の既判力に抵触して訴訟法上許されないとしても、該当請求権など実体法上消滅するものではない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告1が2013年以降に発生した治療費を原告から実際に弁済されたり、被告1が該当請求権を放棄したなどの事情がない本件で、原告が被告1を治療することは依然として原告が所属する医療チームの過失によって被告1に発生した損害を填補することに過ぎないというのが妥当なので、原告は被告らに対して2013年以降に発生した診療費などの支払いを請求することができない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、原審はこれと異なり、原告が被告1に対して賠償しなければならない積極的な損害は2次医療訴訟で2012年6月14日まで計算された治療費などと2037年9月28日まで定期的に支払われる介護費などが確定しているので、すべて填補されたといわなければならないという理由で、原告が本件で求めている診療費は原告の被告1に対する不法行為によって損害の填補に該当しないと判断したが、このような原審の判決には少額事件審判法第3条第2号で定める「大法院の判例に相反する判断」をした過ちがある。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-10033154220701189862018-05-09T13:20:00.000+09:002018-05-09T13:20:12.111+09:00有料道路のゲートを不正に通過した事件(仁川地方法院2018年5月1日判決) 本件は、有料道路のゲートをハイパス(日本のETCカードに該当)を使わずに不正に通過したことが、便宜施設不正利用罪に当たるとして有罪になった事例です。<br />
日本でも同じですが、機械を誤作動させて財産上の利益を得る行為は、機械は錯誤に陥ることがないという理由で詐欺罪が成立せず、自動販売機から商品を無料で持っていくなど窃盗罪に当たる場合でなければ刑法犯にはなりませんでした。<br />
人をだますのも機械を誤作動させるのも同じ犯罪であるという観点から、日本では電子計算機使用詐欺、韓国ではコンピュータ等使用詐欺と便宜施設不正利用という罪が刑法に追加されました。<br />
日本の場合はコンピュータを誤作動させた場合にのみ刑法が適用されるので、例えば、有料道路のゲートを前の車にくっついて通過した場合などはコンピュータを誤作動させたわけではないので電子計算機使用詐欺に当たりません。韓国ではこのような場合も刑法で処罰できるように便宜施設不正利用という罪も創設しました。<br />
なお、日本では有料道路のゲートを不正に通過して料金を支払わずに有料道路を通過した場合は道路整備特別措置法第24条第3項後段、第59条により30万以下の罰金となります。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 誰であっても不正な方法で対価を支払わずに自動販売機、公衆電話その他有料自動設備を利用して財物または財産上の利益を取得してはならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、被告人は2016年5月15日ごろ仁川以下不詳地にある被害者韓国道路公社が管理する有料通行区間でハイパス端末機を設置しない状態で乗用車を運転して料金所を通過する方法で900ウォン相当の財産上の利益を取得したことをはじめとして、別紙犯罪一覧表記載のようにその頃から2017年7月6日までの間に803回にわたって上のような方法で通行料を合計908,440ウォン相当を支払わないことによって同額相当の財産上の利益を取得した。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-67315248733274857432018-05-08T13:43:00.000+09:002018-05-08T13:43:49.649+09:00韓国に住所がない者の後見開始が認められた事例(ソウル家庭法院2018年1月17日決定) 本件は韓国に住所がない外国人(韓国籍を喪失して外国人になったようです)に対して、諸事情を考慮して韓国内に居所があるとして韓国での限定後見(日本の保佐に該当します)の開始を認めたものです。<br />
普通に生活をしていると住んでいるところが住所になるのですが、定住していない人は住民票に書かれた住所が本人の住所になるというわけではなく、今とりあえず住んでいるところが居所になり、居所が住所とみなされるようになります。懲役刑で刑務所にいる人は刑務所に住んでいるわけではないので、刑務所は居所にすぎないということです。<br />
本件は、本人が韓国内に住所がなかったのですが、どこか特定はできないが韓国内で生活しているのは間違いないとして韓国内に居所があるとし、韓国の裁判所に国際管轄を認めました。また、準拠法は原則は本人の本国法が適用されるのですが、緊急の必要性があるとして韓国法の適用を認めました。<br />
なお、日本では「法の適用に関する通則法」第35条第2項第2号により日本で後見開始の審判等をする場合は日本法が適用されるので、諸事情を考慮することなく日本法が適用されることになります。<br />
後見制度は本人を保護するための制度ですが、本人にとっては自分の権利が制限されるわけですから、できれば後見開始を認めてもらいたくないという思いがあって国際裁判管轄が争われたと思われます。しかし、韓国に国際裁判管轄権がないと主張できる程度に判断能力があるのであれば、後見人を定める必要はないような気もします。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 事件本人に対する限定後見開始及び限定後見人選任を求める本件について、事件本人は、自分は大韓民国に居所を置く外国人ではないので、大韓民国の裁判所には国際裁判管轄がなく、大韓民国の民法が準拠法として適用される余地がないので本件申請は不適法として却下されなければならないという趣旨で本案前の抗弁をしている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 記録によると、2011年6月17日に事件本人が大韓民国の国籍を喪失し、2017年ごろ大韓民国で事件本人の外国人登録が抹消された事実は認められるが、一方、本裁判所のソウル出入国管理事務所長に対する事実照会の回答の結果などの記録および審問全体の趣旨によって認められる次のような事情、すなわち、事件本人は大韓民国の国籍を喪失した以降も主に大韓民国に居住してきて(事件本人は国籍喪失以降に大韓民国以外の地域で20日以上滞在した事実がない)、2017年10月12日に大韓民国に入国してから現在まで大韓民国に居住しているところ、そうであれば事件本人は少なくとも大韓民国に居所がある外国人に該当するといえる。また、事件本人はソウル所在の土地および地上商業施設の各2分の1の持分を保有するなど大韓民国内で財産を所有しているだけでなく、上の商業施設などに関する賃貸借契約を締結したり、金融機関から金員を借用するなどの法律行為をしており、現在大韓民国内で配偶者であるEとの間で離婚訴訟を進めており、父である故Dの死亡によってその相続と関連した法律的紛争の当事者になる可能性が高いといえるところ、そうであればこれは被後見人を保護しなければならない緊急の必要性がある場合に該当する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、大韓民国に居所がある事件本人に対する限定後見開始および限定後見人選任を求める本件に関しては国際私法第48条第2項第3号によって大韓民国の裁判所が国際裁判管轄をもち、大韓民国の民法が準拠法として適用され、これに反する事件本人の本案前の抗弁は理由がない。</span><span style="font-family: inherit;"> </span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-64087147143631773472018-05-02T17:18:00.000+09:002018-05-02T17:18:57.236+09:00子の返還請求が認められなかった事例(大法院2018年4月17日決定) 本件は、日本で生活していた韓国人女性が夫の暴力に耐えられず子供2人をつれて韓国に帰国したのに対し、日本人の夫がハーグ条約に基づいて子の返還請求をしたのに対し、子供らは暴力を目撃したことで精神的な苦痛を経験していることから、子供らだけを日本に帰した場合に感じる精神的な苦痛を考慮し、子の返還を認めなかったものです。<br />
離婚した場合に子の取り合いになることは珍しい話ではなく、特に国際結婚が破たんした場合は、それぞれの国に帰ってしまうと子に会えなくなる可能性が高くなるので、自分の手元に置いておきたいという気持ちが強くなります。<br />
本件は、父親が子供に暴力を振るっていたわけではありませんが、子供が母親が暴力を受けるのを見ていたことも父親の子供に対するDVがあったとして、返還請求を認めなかったということなのかもしれませんが、子の福利を考えるときに過去の問題を重要視してしまうと、離婚の原因を作った側の親は子を取り返すことができなくなる可能性が高くなってしまいます。<br />
また、韓国だけでなく日本も同じですが、子供は母親が育てた方がよいという認識が今でも強く残っているような気がします。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 「国際的な子の奪取の民事的側面に関する条約」(以下、「条約」という)とその履行法律である「ハーグ条約の履行に関する法律」(以下、「法」という)によると、子の大韓民国への不法な移動または誘致によって協約による養育権が侵害された場合、裁判所に子の返還を求めることができ(法第12条第1項)、裁判所は子の福利を最優先に考慮して迅速に処理しなければならない(法第3条)。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、裁判所は子の不法な移動などによって養育権を侵害された場合にも法第12条第4項第3号で定めた「子の返還によって子が肉体的または精神的危害にさらされたり、その他耐え難い状況に処すようになる重大な危険がある事実」がある場合には返還請求を棄却することができる(法第12条第4項)。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 法第12条第4項第3号の返還例外事由は子の迅速な返還によってかえって子の具体的で、個別的な福利が侵害されて発生する危険を防止するためのもので、その解釈においてはこの権益が一方の親の養育権や手続きの迅速性などより優先して考慮されなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、重大な危険には請求人の子に対する直接的な暴力や虐待などによって子の心身に有害な影響を及ぼす憂慮がある場合だけでなく、相手方である一方の親に対する頻繁な暴力などによって子に精神的な危害が発生する場合や常居所国に返還する場合、かえって適切な保護や養育を受けることができなくなってひどい苦痛を経験するようになる場合を含む。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 返還請求を受けた裁判所は上のような事情以外にもその危険の程度や繰り返される憂慮があるか、子の返還前後の養育に関する具体的な環境、返還が子に及ぼす心理的、肉体的影響などその他一切の事情を総合的に検討するが、請求人と相手方の養育権などを考慮して子に対する最善の利益が何かや返還がかえって子の福利に深刻な侵害になるかについて判断しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上の法理と原審が適法に採択した証拠によると、請求人が相手方に数回にわたって暴言や暴行を行い、事件本人1は上の暴力を目撃して精神的苦痛を経験し、事件本人らのみ又は事件本人2のみ日本に帰る場合、そのような分離がかえって事件本人らに対する心理的苦痛を与える憂慮があるという点などの事情を考慮して事件本人らが返還される場合重大な危険があるとみて請求人の請求を棄却した原審の判断は正当で、それに重大な危険などに関する法理を誤解したり論理や経験の法則を違反して裁判に影響を及ぼす誤りはない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-9253997224384947642018-04-24T17:21:00.000+09:002018-04-24T17:21:35.752+09:00電子ファイルとその出力物の同一性(大法院2018年2月8日判決) 本件は、電子ファイルの状態で作成された売上記録を変造して脱税したとされた裁判において、問題となった売上記録を証拠として裁判所に提出する際に紙にプリントアウトして提出しましたが、このプリントアウトされた売上記録の内容と、USBに保存されている電子ファイルの内容が同じものであるかどうかが問題となりました。<br />
USBに保存されている電子ファイルの内容とプリントアウトされたものが同じ内容でないとすると、裁判所に提出された紙の記録は証拠にならないことになりますが、これらが同じものであるということは検察に証明責任があります。本件では、検察の証明が十分でないとして裁判所に提出された紙の記録に証拠能力がないとし、有罪を認めていた原審に差し戻しを命じました。<br />
電子ファイルの状態のものを紙にプリントアウトしたときに、そのプリントアウトされたものが電子ファイルの写しなのか、紙にプリントアウトされたものが原本なのかという問題もあり、そもそも電子ファイルとは何なのかという根本的なところから考えなければなりません。もっとも、原本は手書きで写しも手書きしかなかった頃は、原本と写しは明らかに区別することができましたが、原本をワープロで作成して写しをコピー機で作成すると、原本と写しを区別することができません。原本と写しの区別をすること自体が時代に合わなくなっているのかもしれません。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> この部分の争点は、検事が証拠として提出した本件CDに保存されているファイルのうち原審が有罪の証拠とした「本件販売審査ファイル」とその出力物が本件USB内の原本ファイルと同一性が認められるかどうかである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 電子文書を収録したファイルなどの場合には、その性質上、作成者の署名あるいは捺印がないだけでなく、作成者、管理者の意図や特定の技術によってその内容が編集、操作される危険性があることを考慮して、原本であることが証明されたりあるいは原本からコピーした写しである場合にはコピーの過程で編集されるなど人為的な改作なく原本の内容そのままコピーされた写しであることが証明されなければならず、そのような証明がない場合には容易にその証拠能力を認めることができない。そして、証拠として提出された電子文書ファイルの写しや出力物がコピー、出力過程で編集されるなど人為的な改作なく原本の内容をそのままコピー、出力したものであるという事実は電子文書ファイルの写しや出力物の生成と伝達及び保管などの手続に関与した者の証言や陳述、原本やコピーファイルの生成直後のハッシュ値の比較、電子文書ファイルに対する検証、鑑定の結果など諸般の事情を総合して判断することができる。このような原本同一性は証拠能力の要件に該当するので、検事がその存在について具体的に主張、証明しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件CDには本件販売審査ファイルを含めてHが作成したものとみられる4,458個のファイル(以下、「本件個別ファイルら」という)と本件目録ファイルが保存されている。原審の鑑定結果によると、本件個別ファイルらはフォレンジックイメージング作業を経たイメージファイルではないので、本件USBイメージファイルと同一の形態のファイルではないが、本件USBイメージファイルがどのような形態の返還および複製などの過程を経て本件CDに一般ファイル形態で保存されたものかを確認する資料がまったく提出されたものがない。更に、本件目録ファイルには本件個別ファイルらの数字より多い4,508個のファイル関連の名前、生成、修正、アクセスの時間、ファイルのサイズ、MD5ハッシュ値、経路情報が保存されていて、原審の鑑定結果によれば、本件個別ファイルらのハッシュ値と本件目録ファイル上の該当ファイル別のハッシュ値を比較してみると、20個のファイルのハッシュ値が同一でないというものである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、本件目録ファイルが生成、保存された経緯について何らの主張、証明がない本件で、本件目録ファイル自体のファイル名およびそのファイルの属性を通して知ることができる修正日時などに照らして本件目録ファイルが本件差押えの執行当時でないそれ以降に生成された可能性を排除することができない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件事実確認書には本件USBイメージファイルの全体のハッシュ値のみが記載されているだけで、イメージングをした本件USB内の個別ファイルについてのハッシュ値は記載されていないので、本件事実確認書をもって本件販売審査ファイルと本件USB内の原本ファイルとの個別ハッシュ値を相互比較することもできない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> Hは、第一審で、検察の捜査当時にエクセルファイルであった本件販売審査ファイルをみて、自分が作成したもので合っているという思ったと陳述した。しかし、Hが上の捜査当時に本件販売審査ファイルの全部を提示され、その販売金額を確認したといえる何らかの資料がない。かえって、Hは自ら正確に思い出せないが原本であまり必要ないものを削ってファイルを少し見やすくしたようだという陳述をしている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> また、Hは第一審で、検察から本件販売審査ファイルの出力物のうち2012年1月の販売審査の部分のみを提示された状態で自分が整理した販売審査ファイルの内容で合っていて、販売審査ファイルの内容に実際に販売した酒の種類別の数量、売上金額、サービスした金額を入力した事実があると陳述し、弁護人から本件販売審査ファイル全体の出力物を提示された後、自分がそのようなファイルを作成した事実があると陳述もしている。しかし、Hが提示された全体の出力物の量が少なくない反面、本件遊興酒店の2012年1月から2015年10月までの営業期間の毎月の販売金額を正確に記憶することはできないという点とこのような陳述の経緯、先に見た関連陳述の内容などを合わせて考慮すると、このような陳述はHが提示された出力物の形式でいちいち売上金額などをファイル形態で作成、管理したことがあったという事実を確認するレベルに過ぎないという余地が十分にある。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 結局、Hの第一審の陳述のみでは本件販売審査ファイルやその出力物が本件USB内の原本ファイルと同一であるという内容を証明するというには十分でない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件販売審査ファイルが本件USB内の原本ファイルを内容の改変なく複製したことが確認されない以上、本件販売審査ファイルと対照した結果その出力物から課税標準の基礎となる部分の変造内容を探すことができないという事情が本件USB内の原本ファイルの人為的改作なくその出力物が複製、出力されたことを裏付けるということもできない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、原審は本件販売審査ファイルとその出力物が本件USB内の原本ファイルの内容と同一性を認めることができ、証拠能力が認められると判断して、これを前提に特定犯罪加重処罰などに関する法律違反(租税)部分を有罪と認定した第一審をそのまま維持した。したがって、このような原審判決には必要な審理を尽くさないままデジタル証拠の証拠能力に関する法理を誤解した過ちがある。これを指摘する趣旨の上告理由の主張は理由がある。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-16521465775203966602018-04-19T15:12:00.000+09:002018-04-19T15:12:55.994+09:00株式交換に適用される税法の条文(大法院2018年3月29日判決) 本件は、完全子会社化するために実施された株式交換において、完全子会社となる会社ん株式が過大に評価されているとして税務当局が子会社になる会社の株主に対して贈与税を賦課したのに対し、大法院が適用する条文が誤っているとして原審に差し戻したものです。<br />
交換は、日本の民法では「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産を移転すること」とされていますが、「売主が物を売り、その代金で買主から物を買う」行為であると見ることもでき、まさに株式交換は「所有している株式を売却し、現金を受取り、その金銭で新たな株式を購入する」行為とみなしているので、原則として子会社になる会社の株主には譲渡税が発生することになります。<br />
本件の原審もこのような考えにもとづいて子会社になる会社の株式が過大評価されていた場合には、子会社になる会社の株主が「財産を高価で譲渡した」場合の条文が適用されるとしましたが、大法院は株式交換は完全子会社化のためのテクニックなので「法人の資本を増加させる」場合の条文を適用すべしとしました。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 商法上、株式の包括的交換は完全子会社になる会社の株式が完全親会社になる会社に移転する取引と完全子会社になる会社の株主が完全親会社になる会社から完全子会社になる会社の株式と対価関係にある新株を割り当てられて完全親会社になる会社の株主になる取引が結合して一体となされる。また、完全子会社になる会社の株主が株式の包括的交換を通じて利益を得るかどうかは完全子会社になる会社の株主が完全親会社になる会社に移転した完全子会社になる会社の株式に対する相続税および贈与税法上の評価額と完全親会社になる会社から割り当てられる新株に対する相続税および贈与税法上の評価額の差額、即ち、交換差益が存在するかどうかによって決定される。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような商法上の株式の包括的交換の取引構造と特性、そして関連規定の文言内容と立法趣旨および体系などを総合してみると、商法上の株式の包括的交換によって完全子会社になる会社の株主が得る利益については「財産の高価譲渡による利益の贈与」に関する旧相続税および贈与税法第35条第1項第2号、第2項や「新株の低価発行による利益の贈与」に関する相続税法第39条第1項第1号タ目を適用して贈与税を課税することができず、「法人の資本を増加させる取引による利益の贈与」に関する相贈税法第42条第1項第3号を適用して贈与税を課税しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審判決の理由と記録によると、次のような事実が分かる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 訴外Aと原告2はスターNMエンターテインメント株式会社(以下「スターエム」という)が2005年11月24日に実施した有償増資(以下「本件有償増資」という)に参与し、訴外Aは原告1、原告3、原告4(以下「原告1ら」という)名義で各5000株を、原告2は3000株を割り当てられた。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> スターエムは2005年12月5日にコスダックに登録されている株式会社バンポテック(以下「バンポテック」という)とスターエムの株主らがスターエムの株式全部をバンポテックに移転し、その代わりにバンポテックが発行する新株を取得することでバンポテックを完全親会社、スターエムを完全子会社とする商法上の株式の包括的交換に関する契約を締結した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> その後、スターエムとバンポテックは2005年12月20日に株式交換比率を修正してバンポテックがスターエムの総株式86500株を引き受け、その対価としてスターエムの株主らにスターエムの株式1株当たりバンポテックの株式36.4625株を発行することにする株式交換契約を締結し、バンポテックは2006年2月27日にこれに従って原告らからスターエムの株式を引き受ける対価として原告らにバンポテックの株式を発行した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告の松坡税務署長はこのような株式の包括的交換の過程でスターエムの株式価値が過大評価され、原告2らがスターエムの株式を高価で譲渡することで利益を贈与されたという理由で相贈税法第35条第2項を適用して原告2に贈与税を課税した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような事実関係を先に見た法理に照らしてみると、原告2が上のように株式の包括的交換によって得た利益については「法人の資本を増加させる取引による利益の贈与」に関する相贈税法第42条第1項第3号を適用して贈与税を課税することはできるとして、「財産の高価譲渡による利益の贈与」に関する相贈税法第35条第2項を適用して贈与税を課税することはできない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、原審はこれと異なり商法上の株式の包括的交換によって完全子会社になる会社の株主が得た利益について相贈税法第35条第2項を適用して贈与税を課税したことが適法であると判断した。このような原審の判断には株式の包括的交換による贈与利益に対する贈与税の課税に適用する法令などに関する法理を誤解し、判決に影響を及ぼす過ちがある。この点を指摘する趣旨の原告2の上告理由の主張は理由がある。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-38032268210571523852018-04-18T15:29:00.000+09:002018-04-18T15:29:02.262+09:00支払利息が取得税の課税標準に含まれるか(大法院2018年3月29日判決) 本件は、不動産を取得する時期に借り入れた資金に関する支払利息が当該不動産の取得税を計算するための課税標準に含まれるかが問題となった事件で、原審は支払利息が当然に課税標準に含まれるとしましたが、大法院は、借入資金が不動産の取得のために使われたのかどうかについて課税官庁に証明責任があるが、十分な証明がされていないとして原審に差し戻しました。<br />
法律の勉強をしていても、税法は範囲が広いだけでなく、通達などによって運用されているところが多く、弁護士には難しい分野です。しかし、詳細には知らなくても大まかなことは知っておかなければ、依頼者に過大な税金が賦課されたり、税金がかかることを知らないまま放置して加算税が賦課されたりする危険もあるので、勉強しつづけることは大切だと思います。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 旧地方税法第111条第5項及び第8項の委任による旧地方税法施行令第82条の2第1項本文は「法第111条第5項第1号から第4号までの規定による取得価格は取得の時期を基準としてそれ以前に該当物件を取得するために取引相手方または第三者から支払われたり、支払わなければならない直接費用と次の各号の一に該当する間接費用の合計額とする」と規定し、第1号で間接費用の一つとして「建設資金に充当した借入金の利息またはこれと類似する金融費用」を挙げている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このように旧地方税法が建設資金に充当した借入金の利息を取得税の課税標準に含めるように規定しているのは、それが取得のために間接的に所要された金額であることを根拠とする。そうであれば、ある資産を建設などによって取得するのに使用する目的で直接借り入れた資金の場合、その支払利息は取得に所要される費用として取得税の課税標準に含まれるが、そのほかの目的で借り入れた資金の支払利息は、納税義務者が資本化して取得価格に適正に反映するなどの特別な事情がない限り、その借り入れた資金が課税物件の取得のために間接的に所要されて実質的に投資されたものと見ることができて初めて取得税の課税標準に合算することができるといえる。また、課税要件事実の存在および課税標準に対する証明責任は課税官庁にあるので、そのほかの目的で借り入れた資金の支払利息が課税物件の取得のために所要されたという点に関しても原則として課税官庁がその証明責任を負担するといわなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審判決の理由と記録によると、次のような事実が分かる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は本件不動産を買い入れ、その頃、被告にその代金299,250,005,675ウォンを取得価格として取得税を申告、納付した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、原告は上の期間に発生したいくつかの借入金に対する支払利息の合計14,088,712,259ウォン(以下「本件支払利息」という)を費用勘定として会計処理した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告は、2010年12月14日、原告に本件支払利息及び処分信託報酬料などを課税標準に含めなければならないという理由で取得税485,861,270ウォン、農漁村特別税36,941,510ウォン、登録税447,519,260ウォン、地方教育税89,502,600ウォン(それぞれ加算税を含む)をそれぞれ賦課した(そのうち本件支払利息と関連した部分を「本件処分」という)。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上のような事実関係を先に見た法理に照らしてみると、原告は本件支払利息を費用勘定として処理をしただけで、これを資本化して本件不動産の取得価格に反映したことがなく、被告が提出した証拠によっても原告が借り入れた資金らが本件不動産の所得に使用する目的で直接借り入れたものであるとか、本件不動産の取得のために間接的に所要されて実質的に投資されたという点が十分に証明されたとはいい難い。そうすると、原審としては、原告が借り入れた資金らの性格やその使用内訳などを追加で審理して、本件支払利息を本件不動産の取得税の課税標準に合算することができるかや、それによる算定方式の適法かどうかを判断しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、原審はこれに関して審理しないまま、その判示のような理由のみで非課税の慣習が消滅した以降の支払利息は企業会計基準の算定方式に従って本件不動産の取得税の課税標準に全て含めることができるとし、本件処分のうち2006年1月23日以降に発生した支払利息の部分は適法であると判断した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような原審に判断には取得税の課税標準である取得価格に含まれる間接資金に充当した借入金の利息およびその証明責任に関する法理を誤解し、判決に影響を及ぼす違法がある。この点を指摘する趣旨の上告理由の主張は理由がある。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-5305590889498528252018-04-16T15:26:00.000+09:002018-04-16T15:26:03.741+09:00LGBTイベントのために公園を使用できるか(済州地方法院2017年10月27日判決) 本件は、LGBTのイベントを行うための公園の使用許可及びイベントのブースを設置するための占有許可を一度は承認したにもかかわらず、周辺住民からの反対の声が上がったことを理由に許可を撤回したのに対し、撤回の効力の停止処分を求めたものです。<br />
LGBTのイベントというと性的なイメージがあるため、青少年に悪影響を与えるのではないかと周辺の住民の方が心配になるのは理解できます。しかし、そのようなLGBTに対するイメージを払拭するためにイベントを行っているのですから、周辺の住民の方の反対があるからという理由でイベントをさせないようにするのは間違っているといわざるを得ません。<br />
憲法は国民が守るものではなく、政治家が守るものであるという言い方をすることがありますが、憲法というのは法律を作るときや解釈をするときの基準になるものなので、法律を作ったり解釈する機会のない人にとっては憲法を守らなければいけない状況にならないだけで、他人の権利を尊重するという姿勢は守らなければなりません。<br />
社会の中では常に権利と権利とが衝突し、その調整が必要とされています。他人の権利を尊重するというのは、自分の権利が侵害されてもいいから他人の権利を認めるということではなく、自分の権利と他人の権利が衝突したときに自分の権利のみを主張するのではなく、憲法に基づいた権利の調整に従うという姿勢が大切なのではないかと考えます。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被申請人は、当初、本件回答をとおして露店行為の禁止及びイベント用として設置した施設物の完全復旧などを条件に公園の使用を許可したが、本件イベントを反対する請願などを理由に前のように本件委員会側に公園の使用に関する既存の承諾を撤回することを通報した。したがって、申請人らの立場から見ると、本件回答は一応公園使用に対する被申請人の許可行為であって、その後にある本件撤回通報は公園の使用を拒否する行政庁の意思表明として理解する素地がある。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> しかし、都市公園法など関係法令を見ると、利用者らの性的趣向などのみを理由に行政庁をして申請人らのような一般公衆に対して都市公園の使用自体を制限、禁止することを許容する規定は見つけられないところ(本件委員会側から本件イベントの開催予定日に公園に対する集会申告を併せて終わらせたことは先に見たとおりである)、本件審問期日などで確認された被申請人側の立場もまたこれと大きく異ならない。即ち、被申請人は「本件イベントに参加しようとする者らの公園の使用に対しては関係法令上の禁止行為をした場合、事後的に過怠料などを付加することは別として、公園を利用すること自体を禁止することはできないので、本件撤回通報もまた公園の利用を全く禁止しようという意図でなされたものではない」という立場を明らかにしたところである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 結局、本件回答ないし撤回通報の法的性格やそれに関する被申請人の真正な意思などとは関係なく、被申請人側が訴訟の過程で本件イベントの開催のために公園を使用する行為自体は問題としないという立場を明らかにした以上、申請人らとしては必ず本件申請をとおして公園の使用と関連した本件撤回通報の効力の停止などを求める必要がない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、申請人らのこの部分の申請は申請の利益がないので受け入れない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 公園を本件イベントの場所として使用する問題とは異なり、被申請人は公園内のイベント用ブースの設置が可能かどうかに対しては、本裁判所の釈明の要請にも関わらず、それに対する立場を具体的に明らかにしていない。申請人らは2017年9月27日付の公文をとおして被申請人に公園内のイベント用ブースの設置を要請したのには都市公園法第24条による占用許可の申請意思が含まれていたものといえるところ、それに関する被申請人の主張と立場が明らかでないが、上で見た事情及び訴訟の過程での態度などを参酌すると、被申請人としては</span><span style="font-family: inherit;">一応本件撤回通報をとおしてイベント用ブースの設置に対して既存の承諾意思を撤回したと評価できる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> しかし、本件記録及び審問自体の趣旨によって分かる次のような事情、すなわち、本件委員会側は先に見た集会申告などをとおして公園内で本件イベントを開催することが可能であるが、申請人らが設置しようとしていたブースは集会やイベントなどの開催に一般的に必要な施設物でありながら、その設置期間が一日を超えない短期間である上、現状復旧もまたかなり容易であるといえる点、被申請人が公園内での本件イベント自体は禁止しないとしながらイベント会場内のブースの設置のみを禁止する公益的な必要性は大きいとはいえない反面、申請人らを含めた本件イベントの参加者らはイベントの進行のための基礎的な施設の設置さえ禁止されることで事実上の集会ないし表現の自由の一部を制限されるようになるが、該当する基本権の本質および内容に照らして当事者らが受ける上のようなイベントの管理および進行上の制約を決して軽く見ることはできない点、本件イベントと類似した目的で開催されていた他の地域でのクィア文化祭はもちろん通常の集会、イベントなどでも上のようにブースの設置のみを制限した事例は探すことが難しい点、被申請人もまた本件回答をとおして申請人らの公園内のブースの設置要請を受容したしたが、本件撤回通報をとおして既存の立場を覆したとものといえるが、「本件イベントの進行途中に青少年の有害物と指定された性器具などが展示、販売されたり、突発的な過多な露出行為があるかもしれない」という漠然とした憂慮にもとづいた一部の請願を除外しては申請人が既存のブースの設置を許す立場を撤回するほどの重大な事情の変化があったとは言えない点などを総合すると、その開催が迫っている本件イベントの円滑な進行を混乱させると予想させる本件撤回通報によって申請人らを含めたイベント参加者に発生する損害を予防するために上の撤回通報の効力を停止する緊急な必要性があると認められ、上のような措置が公共の福祉に重大な影響を及ぼす憂慮があるといえるだけの資料もない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、申請人らのこの部分の申請は理由がある。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-32339485296366147082018-04-10T15:22:00.000+09:002018-04-10T15:22:07.830+09:00被相続人の退職年金を受領すると単純承認になるか(蔚山地方法院2018年3月29日) 本件は、相続人が相続放棄をしたのに対し、被相続人の債権者が「相続人が被相続人の会社から退職金や退職年金などを受領した行為が相続財産の処分行為に該当し、単純承認とみなされる」と主張し、相続人に対して借金の返済を求めた事案です。<br />
相続人が被相続人の債権を執行する行為は相続財産の処分行為に当たり、単純承認をしたとみなされるのが原則です。<br />
しかし、裁判所は相続人が被相続人の扶養家族であり、まだ学生であったこと、退職金の2分の1に該当する金額や退職年金は差押え禁止財産であること、相続人が受領した金額は差押え禁止財産の範囲内であることを理由に、退職金や退職年金を受領した行為は相続財産の処分行為に当たらないとしました。<br />
相続人が債権を取り立てる行為が相続財産の処分行為に当たるというのは日本の判例にもありますが(最高裁昭和37年6月21日判決)、今は給与が現金払いされることがなくなったり、通常は現金は銀行に預けておくようになったりしているので、給与債権や預金債権を現金化することを債権を取り立てることと同一視すべきでないと考えます。<br />
また、相続財産が現金として手元にある場合にその中から葬式代を出すことは相続財産の処分に当たらないのに、銀行に預けてある場合にはその中からら葬式代を出すと相続財産の処分に当たるとするのは変だと思うのが常識的な判断と思われます。<br />
本件は、葬式費用を出すために退職金などを受領した行為を相続財産の処分に当たるとして単純承認とみなすと多額の借金を背負うことになるという事情を踏まえて、単純承認に当たらないとしたと思われます。理由は疑問がありますが、結論は妥当と思います。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、被告らが上の相続放棄申告の受理審判を受ける前に故人が労働者として働いていた会社から故人の退職金などを受領しているところ、これは民法第1026条第1号が相続の単純承認とみなす事由として定める「相続人が相続財産に対する処分行為をしたとき」に該当するので、その後になされた被告らの相続放棄は効力がないと再抗弁する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告らが上の相続放棄申告後にその受理審判がある前である2017年8月24日に個人が労働者として働いていた会社から故人の退職金などの名目で25,143,774ウォン(以下「争点受領金」という)を被告の口座に受領した事実は当事者の間で争いのないところ、下のような理由で、上の受領行為は民法第1026条第1号が定める「相続人が相続財産に対する処分行為をしたとき」に該当するといえないので、原告の上の再抗弁は受け入れられない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 争点受領金25,143,774ウォンは、故人の退職金、給料およびこれと似た性質をもつ債権(以下「退職金など」と総称する)の2分の1に該当する金額、故人の退職年金、慰労金など遺族固有のものとして支払われた金額の3種類の名目から構成されており、その他の名目で支払われた金額はない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> まず、争点受領金のうち慰労金など遺族固有のものとして支払われた金額は故人の遺族である被告らの固有財産なのでそれ自体で民法第1026条第1号でいう「相続財産に対する処分行為」とみる余地がない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 争点受領金のうち個人の退職金などの2分の1に該当する金額、故人の退職年金はすべて広い意味で「相続財産」に該当するが、下のような理由で被告らのその受領行為が民法1026条第1号でいう「相続財産に対する処分行為」に該当しないというのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 個人の退職金などの2分の1に該当する金額は、民事訴訟法第246条第1項第4号、第5号によって差押えが禁止される財産で、故人の退職年金はその全額が勤労者退職給与保障法第7条第1項の趣旨上、差押えが禁止される財産であるところ、このように法律上差押えが禁止される財産は債権者による責任財産から除外される。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 法律上差押えが禁止される財産の中でも上のように労働者の退職金などの2分の1に該当する金額や労働者の退職年金は労働者Fだけでなく、その扶養家族の安定的な生活を保障するため社会保障的な次元で差押えが禁止される財産であって、労働者が死亡して相続人になった者が死亡した労働者の扶養家族でなかった場合は別として、相続人になった者が労働者の扶養家族であった場合には上のような立法趣旨が依然として貫徹される必要がある(むしろ労働者が単純に退職した場合より死亡した場合、その扶養家族に対する安定的な生活保障の必要性がより大きくなるので、上のような立法趣旨の貫徹の必要性がやはりより大きくなるといえる)、それによって、このような場合、労働者の退職金などの2分の1に該当する金額と労働者の退職年金は相続債権者のための責任財産から除外され、このように相続債権者のための責任財産から除外される相続財産は民法1026条第1号でいう「相続財産」に該当しないという解釈が妥当であるが、被告らの年齢、身分(2人とも学生である)などを勘案すると、被告らは故人の扶養家族に該当するというのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> もし、見解を異にして、労働者が死亡してその扶養家族が相続人になる場合、労働者の退職金などの2分の1に該当する金額や労働者の退職年金のすべてを相続債権者のための責任財産に該当するとしたり、相続債権者のための責任財産であるかどうかに関係なく死亡当時の被相続人の債権でありさえすれば民法第1026条第1号でいう「相続財産」に該当するという見解に立脚して仮定的に判断しても(したがって、以下の判断は傍論に該当する)下のような理由で被告らの故人の退職金などの2分の1に該当する金額と故人の退職年金を受領した行為は民法第1026条第1号でいう「相続財産に対する処分行為」に該当しないと宇するのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上でみたように、差押え禁止財産である労働者の退職金などの2分の1に該当する金額や労働者の退職年金が民法第1026条第1号でいう「相続財産」に該当するかに関しては肯定する見解と否定する見解が十分に対立しうるものといえる(判例の中には相続放棄をした相続人らが相続放棄の前に被相続人の給与および退職金を受領したことが民法第1026条第1号でいう「相続財産に対する処分行為」に該当するとするものがあることはあるが、上の事案は被相続人の給与及び退職金のうち2分の1のみを受領した事案でないため、本件に直接的に適用されうる性質のものではない。一方、学説はむしろ差押えが禁止されているかどうかに関係なく労働者の死亡時に遺族に支払われる退職金などや退職年金の全部が相続財産でなく遺族の固有財産に該当するという見解が通説に近い多数説といえる)。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上のように解釈上疑問が提起されている状況で被告らは会社から故人の退職金などの2分の1に該当する金額、故人の退職年金、明白に自分の固有財産に該当する金額のこの3種類のみを争点受領金として受領してから、そのうち故人の葬式費用として合理的な範囲内といえる11,410,000ウォンを支出し(合理的な範囲内の葬式費用は民法第998条の2によって元来相続財産の中から支払うことができるので、これは民法第1026条でいう相続財産の処分ないし不正消費行為に該当するという余地がない)、残り13,733,774ウォンは一切消費しておらず、受領した口座にそのまま保管しながら裁判所の判断を求めている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、故人は死亡当時、会社を第三債務者として仮差押えをした債権者らだけをみても、原告に対して150,000,000ウォンが超える債務を、株式会社○○キャピタルに対して47,000,000ウォンが超える債務をそれぞれ負担するなど巨額の債務を負担していた。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> これを総合してみると、被告らが会社から争点受領金を受領したことを民法第1026条第1号でいう「相続財産に対する処分行為」に該当するとして、その相続放棄の効力を否認することは被告らにかなり苛酷で衡平に合わない。</span><span style="font-family: inherit;"> </span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-86790153997773746212018-04-09T15:53:00.000+09:002018-04-09T15:53:29.153+09:00在留資格の変更が認められなかった事例(蔚山地方法院2018年3月29日判決) 本件は、外国人労働者が事業場の変更をする場合は労働契約の終了日から1ヶ月以内に申請しなければなりませんが、労働契約の終了日が当初の労働契約の終了日なのか、更新した労働契約の終了日なのかが争いとなった事件です。<br />
裁判所は、使用者が労働契約を更新するときに届出をしなかったので、労働契約は当初の終了日に終了しているとし、在留資格の変更を認めませんでした。<br />
労働契約自体は労働者と使用者の合意によって決まるので、労働契約を両者が合意して更新した場合は、労働契約の終了日は更新した労働契約の終了日になると考えるべきだと思います。<br />
しかし、在留資格の変更は在留資格を有するものだけに認められるもので、労働契約の終了日から1ヶ月以内に事業場の変更を申請するようになっているのは、労働契約が終了した在留資格の基礎となる事実が消滅しても、それから1ヶ月以内であれば変更を認めるという趣旨だと考えられます。そうすると、使用者が労働契約の更新を届け出なかったときは、外国人労働者の在留資格が消滅するので、在留資格の変更が認められないという結論自体は妥当であると考えます。<br />
外国人が就労ビザを取るのは使用者にとっても手続きが面倒ですが、使用者のミスによって働きたいのに働けなくなるというのはかわいそうだと思いました。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、ウズベキスタン国籍で2015年9月9日に大韓民国に非専門就業(E-9)の在留資格で入国し、株式会社○○エンジニアリングで労働者として勤務した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、2015年12月16日に株式会社○○エンジニアリングの労働契約が合意解除されて終了すると、2016年1月4日に被告に事業場変更申請をした。2016年2月4日に株式会社○○ENGと労働契約期間を2016年2月4日から2017年1月1日までと定めて労働契約を締結した(以下「本件労働契約」という)。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 株式会社○○ENGは被告に外国人労働者の雇用などに関する法律(以下「外国人雇用法」という)に従って原告に関する外国人労働者雇用許可を申請し、被告は2016年2月4日に上のような内容で雇用許可をした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、2017年1月1日ごろ株式会社○○ENGと本件労働契約を更新し、同年6月まで労働を提供した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、2017年8月11日に被告に「事業場の雇用許可取消」による事業場変更申請をしたが、被告は2017年9月18日に原告が使用者と労働契約を終了した日から1ヶ月以内に事業場変更申請をしなかったという理由で上の申請に対して不許処分(以下「本件処分」という)をした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告は、株式会社○○ENGが被告に本件労働契約の更新による外国人労働者雇用許可期間の延長許可を受けなかったので在留資格が取り消された事実を2017年7月18日ごろになって初めて知り、その直後である2017年7月26日ごろ、事業場変更申請をして1ヶ月の期間を遵守したので本件処分は違法であると主張する。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> まず、本件労働契約の終了日に関してみる。乙第4号証の記載に弁論全体の趣旨を総合してみると、株式会社○○ENGは本件労働契約の更新に関して被告に許可を受けるなどの手続を履行しなかった事実が認められるところ、本件労働契約は外国人雇用法第9条第3項、同法施行令第17条第2項によって当初の雇用許可を受けた2017年1月1日の経過によって終了したとみるのが妥当である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> そして、先に見たところのように、原告は2017年8月11日に被告に事業場変更申請をしたが、これは本件労働契約の終了日から1ヶ月が経過していたことが歴数上明白なので、原告の事業場変更申請を許可しなかった被告の本件処分は適法といえる。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-83243910551535082642018-04-06T16:08:00.000+09:002018-04-06T16:08:11.911+09:00取引の相手方が問題となった事例(大法院2018年1月25日判決) 本件は、軽食のフランチャイズ加盟店に食材を供給していた食品メーカーが、流通業者から代金を支払ってもらえなかったことから、フランチャイズの加盟本部に対して代金の支払いを求めたものです。<br />
原審は、加盟本部が食品メーカーの選定や、価格の選定を行っていたこと、流通業者が加盟店から集金して食品メーカーに支払っていたことを理由に、流通業者は加盟本部の手足となって食材の供給をしていただけで、取引の真の相手方は加盟本部であるとして代金の支払いを命じました。<br />
これに対し、大法院は、食品メーカーが税金計算書を流通業者に発行していたこと、帳簿に取引の相手方として流通業者の名前を記載していたことを理由に、取引の相手方は流通業者であるとして差し戻しを命じました。<br />
コンビニやスーパーでの買い物とは異なり、会社などの取引では物を渡した後にお金をもらうのが通常なので、物は渡したのにお金がもらえないということがよくあります。売買契約の相手方は、実際に物のやり取りをしている者であるのが原則なので、物を渡した者にお金を請求することになりますが、相手がお金を持っていなければどうしようもありません。そのような場合に、どうにかして他にお金を持っている人からお金をもらおうとすることになります。本件は、まさにそのような場合であったと思われますが、原審では加盟本部に支払い義務を認めているので、必ずしも理由をこじつけてお金をもらおうとしていたのではないのかもしれません。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一般的に契約の当事者が誰であるかはその契約に関与した当事者の意思解釈の問題に該当する。当事者の間に法律行為の解釈を巡って見解が異なり当事者の意思解釈が問題になる場合には法律行為の内容、そのような法律行為がなされた動機や経緯、法律行為によって達成しようとする目的、当事者の真正な意思などを総合的に考察して論理と経験則に従って合理的に解釈しなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審の判決理由によれば、被告は「アタル」という営業表示を利用して軽食専門店のフランチャイズ事業をした者(加盟事業取引の公正化に関する法律(以下、「フランチャイズ事業法」という)上の加盟本部に該当する)、株式会社マル流通(以下、「マル流通」という)は被告と「物流及び営業管理の手数料支払い契約」(以下「本件物流手数料契約」という)を締結し、被告の加盟店に食材などを供給した者、原告は食材の製造、販売業者であって被告の加盟店に供給されたスンデなどの食材などを納品した者である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件で、原告は被告とスンデなどに関する食材の納品契約を締結し、マル流通をとおして被告の加盟店に食材を納品していたことを理由に被告に未払いの食材代金の支払いを求めている。これに対し、被告はマル流通が直接原告から食材を購入して被告の加盟店に供給していたと主張し、原告と納品契約を締結した当事者は被告でなくマル流通であると争っている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、本件の争点は、原告との間で食材の納品契約を締結した当事者が被告かマル流通かである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審は、その判示のような理由を挙げ、下のように判断した。即ち、原告は被告と「被告の加盟店で使用するスンデなどの食材を原告が被告と合意して定めた納品単価など契約条件に従って被告に納品したが、具体的な納品物量は被告の専担物流配送業者であるマル流通が加盟店の注文量を集めて原告に伝達することと定めることにした」という食材納品基本契約を口頭で締結したといえる。このような契約にしたがって原告は被告の履行補助者であるマル流通をとおして加盟店の注文量を伝えられて加盟店に配送していたので、結局、被告にスンデなど食材を納品したものである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> しかし、先に見た法理と記録に照らしてみると、原審の上のような判断はそのまま首肯しがたい。その理由は下の通りである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告とマル流通の間に締結された本件物流手数料契約は、マル流通が直接被告の指示または加盟店(被告の指示と加盟店を合わせて、以下「被告の加盟店など」という)から注文を受け、被告が選定した食材の製造、生産業者から食材を納品してもらい、被告の加盟店などに運送し、その物品代金をマル流通自身の責任で直接被告の加盟店などから回収してからその販売利益(被告の加盟店などから集金した商品代金から納品業者に支払う食材代金を精算した金額)の一定比率を被告に手数料として支払う構造になっている。また、汎用食品(砂糖など「アタル」商標がない材料)を除外した食材の購入先の選定及び品質規格の指定、購入価格や売却価格の選定は被告の固有権限としていた。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような本件物流手数料契約の内容を見ると、被告の加盟店などに材料を供給する主体は無論、原告のように食材の製造、生産業者から食材を納品してもらう主体もマル流通であることを当然の前提としている。即ち、上の契約は加盟本部である被告がマル流通を「中間供給業者」として指定する内容といえる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> フランチャイズ事業法はフランチャイズ事業の特殊性を考慮し、一定の場合には加盟本部が加盟店に原材料または副材料を特定の取引相手(加盟本部を含む)と取引するように強制することを許容しているが(フランチャイズ事業法第12条第1項第2号、第2項、同法施行令第13条第1項、別表2第2項ナ目)、そのような事情のみで加盟本部がその供給取引の相手方となったり供給取引自体による何らかの責任を負担するようになるものではなく、さらに加盟本部は各原材料や副材料別に供給業者を一つ一つ指定して、加盟店と直接取引するようにすることは非効率的であるので、中間供給業者を指定してその業者をして各材料別の供給業者から材料を供給してもらって加盟店と取引するようにする場合がある。この場合、加盟本部は品質基準の維持のために中間供給業者として加盟本部が指定した業者のみから材料を供給されるように定めることができるが、このように加盟本部が各材料の供給業者の指定に関与していたとしてもそのような事情のみで加盟本部と各材料の供給業者をその供給取引の当事者と断定するだけの典型的な徴憑ともいい難い。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 実際にマル流通は本件物流手数料契約に従って、被告の加盟店などから商品の注文を受け、被告が選定した食材の製造、生産業者から食材を納品してもらって自身の物流センターの倉庫に保管しており、被告の加盟店などに注文商品を供給して直接加盟店から代金を集金してからその販売利益の一定比率を被告に手数料として支払ってきた。また、マル流通と被告は2013年11月22日に本件物流手数料契約を解約しながら、マル流通が購入してその物流センターの倉庫に保管していた食材など在庫商品をその購入価格基準で被告が引き取ることにするなどの内容で合意をすることもしている。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告の品質検査を経てスンデなど食材の納品業者に選定された原告もマル流通の物流センターにスンデなど食材を納品し、マル流通から食材代金を支払ってもらってきただけでなく、それと関連してマル流通宛に税金計算書を発行してきた。「ヌリ食品」はマル流通の設立前の照合であるが、原告が2010年1月1日から2013年12月31日まで作成した取引内訳書に供給された者が「アタル(ヌリ食品)」または「アタル(マル流通)」と記載されている。原告が被告から食材代金を受領したり食材の納品と関連して被告に税金計算書を発行したことはなく、原告が本件提訴前まで飛行を相手に未払い食材代金の支払いを要求したといえる資料もない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 一方、2012年11月ごろから被告の会計を担当する会計士がマル流通名義の口座のOTPカードを保管しながらマル流通の食材納品業者に対する食材代金支払いに関与したことがあるが、これはマル流通が食材納品業者に対する食材代金と被告に対する手数料を延滞する状況でフランチャイズ事業の安定及び正常化のためにマル流通の同意の下になされた加盟本部の中間供給業者に対する一定程度の関与といえるのみである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような本件物流手数料契約の内容及びその趣旨、被告、マル流通、原告の間に実際になされた取引形態などを総合してみると、マル流通は単純に被告の配送及び集金業務を代行した者でなく、加盟本部である被告の中間供給業者であって、飛行が選定したスンデなどの製造生産業者である原告と直接納品契約を締結するという意思によって原告からスンデなど食材を納品してもらってその名義で代金を決済し、税金計算書を交付されてきて、原告もやはり納品契約の相手方をマル流通として認識していたといえる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、原審はその判示のような理由のみで、原告と食材納品契約を締結した当事者を被告とし、被告が原告に未払い物品代金を支払う義務があると判断してしまった。このような原審の判決には当事者の確定または法律行為の解釈に関する法理などを誤解して判決に影響を及ぼす過ちがある。この点を指摘する被告の上告理由の主張は理由がある。</span><span style="font-family: "MS 明朝"; font-size: 10.5pt;"> </span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-5867212325364416702018-04-05T14:41:00.000+09:002018-04-05T14:41:29.789+09:00盗品の買主に損害賠償を請求できるか(蔚山地方法院2018年3月23日判決) 本件は、会社Aに勤務する職員Bが、会社所有の資材を横領し、会社Aに無断でC(会社Dの代表取締役)に販売した事案で、会社Aが原告となり、職員Bだけでなく、C及びDに対しても損害賠償を請求した事件です。<br />
裁判所は、Bについては損害額の全額を、C及びDについては損害額の80%を支払う義務があるとして、連帯で支払うように命じました。<br />
本件は盗品の売買に関する事案ですが、原則として資材の所有権は原所有者Aにあるので、即時取得が認められない限り、C及びDが資材をAに返還し、BがC及びDに代金を返還することで解決します。<br />
しかし、資材が既に使用されていて返還することができないのが通常で、この場合は、C及びDはAに返還するものがなく、Aが資材の価格相当の損害を被るので、AがBに対して損害賠償を請求することになります。もっとも、横領するような者が資産をもっているはずがなく、AはBに損害賠償を請求しても損害額を満足させることができないので、C及びDに請求できるかどうかが問題となります。<br />
本件は、盗品がどうかを確認すべき注意義務を怠ったと判断しましたが、盗品かどうかを確認すべき注意義務の根拠は明らかにされていません。通常の取引では、そのような注意義務があるとは思えませんが、本件は、販売価格が原価を下回っていたこと、1年以上にわたって売買していたことなど、Cが本件資材が盗品であることを知っていたであろうことを推定させる事実があったことから、過失による不法行為を認めた事例判断であると思われます。<br />
また、今回は連帯責任を認めましたが、B、C及びDの責任割合までは明らかにしていないので、例えばBが全額を支払った場合に、C及びDにどれだけ求償できるかのかということに興味がもたれます。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"> </span><span style="font-family: inherit;">認定事実によれば、被告Bは業務上保管していた原告所有の本件資材を原告の知らないうちに売ってから、その代金を任意に使用し、被告Cは被告Bが販売する本件資材が盗品なのかを確認することができたにもかかわらず、そのような注意義務を怠った過失により原告に本件資材の仕入原価128,522,912ウォン相当の損害を負わせた。したがって、特別な事情がない以上、上の被告らは共同して原告に損害賠償額128,552,912ウォンとこれに対する遅延損害金を支払う義務がある。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> また、被告Dは代表者である被告Cが上のように不法行為をしたことによって原告に仕入原価91,515,662ウォン相当の損害を負わせたので、被告Cと共同して原告に上の金額とこれに対する遅延損害金を支払う義務がある。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 但し、原告は本件配管資材の仕入原価を計算するのにおいて付加価値税を適用しなかったので、付加価値税額に該当する12,852,291ウォンも原告の損害額としてこれを賠償しなければならないと主張する。しかし、原告が付加価値税を含めて本件資材を仕入れたとしても、該当税額と同じだけ売上税額から控除を受けたので、上の付加価値税額を原告の損害とすることはできない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被害者の不注意を利用して故意の不法行為を犯した者が、まさに被害者の不注意を理由に自分の責任を減らしてほしいと主張することは許されない。しかし、これはこのような事由がある者に過失相殺の主張を許すことが信義則に反するためなので、不法行為者のうちの一部にそのような事由があったとしても、過失による不法行為者ついては被害者の過失を参酌して過失相殺をすることができる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原告の資材を故意に盗んだ被告Bと異なり、被告Cは被告Bが販売しようとする物件が盗品なのかに対する注意義務を起こった過失により原告に対して不法行為を犯したものなので、上の法理に従って過失相殺を主張することができる。そのため、みてみると、原告は被告Dが3年余りという長い期間に原告の横領してきたにもかかわらず、これを発見できなかったが、もし原告が在庫管理などを徹底にしていればより早く犯罪事実を発見して損害の拡大を防止することができたにもかかわらず、このような注意を尽くさなかった過失がある。したがって、原告のこのような過失を参酌して被告C、Dの責任を80%に制限する。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-679385594965229022018-04-04T15:19:00.000+09:002018-04-04T15:19:19.232+09:00宗教上の理由により兵役を拒否できるか(蔚山地方法院2018年3月6日) 本件は、信仰している宗教の教えに従って兵役につくことを拒否したことについて、兵役法違反に当たらないとして無罪を宣告した事件です。<br />
韓国は徴兵制があり、兵役法88条第1項の規定により、現役入営通知書を受けた者が正当な理由なく入営日から3日以内に入営しない場合には3年以下の懲役に処されることになります。正当な理由については例示がありませんが、裁判所は、物理的な理由で入営できない場合に限らず、憲法で保障された権利にもとづいて、かつ、兵役法の立法目的を毀損しない範囲で兵役を拒否する場合も含むとしました。<br />
軍隊に入隊して訓練するということは、戦争のための訓練をすることです。戦争のための訓練とは家族を守るための訓練といえば聞こえはいいですが、家族を守るために敵を殺すための訓練であることに違いはありません。<br />
人を殺したくない、人を殺してはならないと考え、人を殺すための訓練を拒否することは正当な事由であるとした裁判所の判断は妥当であると考えます。しかし、韓国ではこのような良心的兵役拒否により毎年600人程度が有罪となっているそうです。<br />
以下は、判示の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 我が国の特殊な安保状況を勘案しても、1年間に良心的兵役拒否によって懲役刑を宣告される者が600名程度と入営人員全体の0.2%に過ぎず、軍事力の低下などを論じるのは難しい。既に防衛産業体や公益勤務など代替服務形態の軍服務が毎年徴兵検査人員のうち約13%に達している点を勘案すると、更にそうである。世界的に徴兵制を採択している多くの国家、特に台湾も良心的兵役拒否を認めており、国連の人権委員会も良心に従う懲役拒否権を認めなければならないという決議案を採択した。代替服務を受容しながらその期間と勤務条件など軍服務との負担衡平性を考慮して代替服務の形態を設計、運営すれば難しくなく国民的共感帯を得ることができ、悪意的兵役忌避者も区別することができる。既に我が国の国防部でも2007年ごろ代替服務制度研究委員会を設置して積極的に代替服務制度の導入を検討して社会服務制度を新設する方案を発表したところである。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 従って、良心の自由が国防義務より先に立つ憲法的価値であると断言することは難しいが、上でみたように少なくとも国防義務の本質と兵役法の立法目的を毀損しなくても比較的容易に良心の自由を保障することができる方法がある限り、そのような良心の自由は保障されなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、銃を取り扱う方式の兵役義務を拒否し、その代わりに代替服務を進んで履行する意思がある点で、国家共同体に対する義務を履行しないようにしようとする単純な兵役忌避とは区別される。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人の法廷陳述と証拠などを総合すると、被告人はエホバの証人の信徒である両親の下で成長しながらエホバの証人を信奉し、12歳の時に聖書交付をしたが、2009年12月1日からエホバの証人に所属し、2010年5月22日に洗礼を受けた事実、被告人は2015年2月11日にCを卒業してから6か月間、○○重工業協力業者で働いたが、1年2か月間のウェイターのアルバイトをしたが、兵役義務を除いて国民としての義務を誠実に履行してきて、現在まで刑事処罰を受けた前歴も全くない事実、被告人は「神様に仕える者が二度と戦争の訓練もしない」「刀を持つ者は全て刀で滅びるだろう」という聖書の内容に従ってすべての戦争に反対し、この世の政治と戦争のような問題から中立を維持するという立場を堅持している事実、被告人は現在までエホバの証人が主管する毎週5つの集会に参加しており、毎年3回にわたって開かれる大会と記念式を含めた複数の特別な集会活動もしており、働くときにその職業が宗教生活に妨害を与えることを知って仕事を辞めて簡単なアルバイトをすることもしており、2017年1月から補助パイオニアとして活動している事実、被告人は信仰をともにする周辺の者らが被告人と同じ理由で懲役刑の刑事処罰を受けても自分に賦課された兵役義務を拒否しようと決心した事実を認定できるが、これによれば、被告人は自分の真正な良心上の決定に従って公訴事実のような兵役拒否に至ったものと判断される。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> したがって、被告人の兵役拒否は兵役法第88条第1項の「正当な事由」がある場合に該当する。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-80085573520761671252018-04-01T19:43:00.000+09:002018-04-01T19:43:54.728+09:00送り状に他人の名前を書くと私文書偽造となるか(大法院2018年1月25日判決) 本件は、被告人が叔母と叔父を陥れるために、叔母と叔父を送り主として偽物の爆弾を送る際に、送り状に叔母と叔父の名前を書いた行為が私文書偽造になるかどうかが争われた事件です。<br />
原審は、送り状は刑法上の私文書に当たらないとして無罪としましたが、大法院は送り状は荷物の送り主が誰であるかを証明することができる文書なので、刑法上の私文書に当たるとし、私文書偽造及び行使罪が成立するとしました。<br />
送り状には住所と名前しか書かれていないのに私文書偽造になるというのは変な感じがしますが、私文書偽造という犯罪が文書の作成者を偽る行為であるとすると、送り状が文書であるとすれば私文書偽造が成立するというのは仕方がないのかもしれません。<br />
この理屈が成り立つとすると、送り状を使用せずに荷物の箱に直接住所と名前を書いた場合であっても、文書は紙に書かれている必要はないので、嘘の住所と名前を書けば私文書偽造になるということになるのでしょう。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人はCの甥(Cの兄Dの息子)で、2~3年前、インターネット上でCの娘のふりをしながら男らに売春を持ち掛けて相手方がCの住居地に訪ねてくるなど問題が発生してCから叱責を受けたことがあるが、2017年3月ごろ、再びCから「またお前が携帯電話で娘のふりをしていたずらをしているのか」という言葉を聞くと、Cに対して不満を抱くようになった。これに被告人は政府の関係部署から事業支援金を受けて株式会社Eを運営していたCに不利益を与えるために、Cの妻F名義で偽物の爆発物などを宅配を利用して政府ソウル庁舎に送ることにした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2017年4月上旬ごろ、爆発物であるダイナマイトのように見えるように爆竹50個を黒いテープで巻いて偽物の爆発物を作り、政府の関係部署に対して要請事項を記載したA4用紙63枚を作成した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2017年4月16日ごろ、住居地からコンピュータを利用して紙に「広州広域市東区G建物506号E,F」という文言を出力した(以下、この出力物を「本件出力物」という)。上の住所は、Cが運営する株式会社Eの本店の住所である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2017年4月17日、北広州郵便局から宅配運送を依頼し、偽物の爆発物と要請事項記載用紙63枚を入れた宅配ケースの発送人欄に本件出力物を貼ってから(受取り主には「ソウル特別市鍾路区政府ソウル庁舎担当者宛」と記載された出力物を貼った)郵便局職員に宅配ケースを渡したが、当時郵便局の職員は被告人が本件出力物に記載されたF本人であるかを確認しなかった。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 上の宅配ケースは光化門郵便局に運送されたが、担当者が受取り主不明を理由に発送人欄の本件出力物上の住所にこれを返送し、返送された宅配ケースは2017年4月19日Cに配達された。Cは宅配ケース内の偽物の爆発物を本物の爆発物と誤認して警察に申告し、申告を受けた警察官などが現場に出動することになった。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は捜査機関から、偽物の爆発物などが入っている宅配ケースを政府ソウル庁舎に送りながら送り主名義を騙っていたので、送り主住所を叔母の会社で記載した理由に関して、叔母と叔父が自分を馬鹿にして不満があり、政府ソウル庁舎が偽物の爆発物が入った宅配ケースを受け取って叔母か叔父がこれを送ったと判断するようにして叔父が政府から受けている事業支援金を受け取れないようにするためだと陳述した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> このような事実関係から分かる次のような事情、すなわち本件出力物は宅配ケースの送り主欄に付着されたもので、その内容物を受取り主である政府ソウル庁舎担当者に送るものが「F」であるという事実を表示、証明するものである点、被告人は本件出力物に関する私文書偽造および偽造私文書行為の点と併せて起訴されたところのような脅迫の犯行を計画して実行したものが自分であることを隠す意思で、偽物の爆発物などが入った宅配ケースに自分の姓名と住所を記載する代わりに送り主の名義を叔母で、送り主の住所を叔父の会社で記載して受取り主に対する関係で脅迫の主体を被告人でない他の者と特定しようとしていた点などを先に見た法理に照らしてみると、本件出力物は宅配ケースに入っている偽物の爆発物などを受取り主に交付する者として脅迫犯行行為者を表示して、受取り主がこれを確認する手段となるものなので、取引上重要な事実を証明する文書やその内容が法律上または社会生活上意味のある事項に関する証拠になりうるものなので刑法が定める私文書に該当するというのが妥当である。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-34041405022831855102018-03-30T13:50:00.000+09:002018-03-30T13:50:19.320+09:00北朝鮮のツイッターをフォローすると国家保安法違反になるか(大法院2018年1月25日判決) 本件は北朝鮮のツイッターアカウントをフォローしたことが国家保安法第7条(讃揚、鼓舞等)に該当するか争われた事件です。<br />
結論としては、頒布や頒布の幇助、所持には当たらないとして一部無罪となりましたが、反国家団体に同調している部分は認められて有罪となりました。<br />
人は生まれる国を選択することができませんが、自分が選択できないことのせいで自分の行動が制限されることがあってはならないというのが基本的人権の根本思想だと考えています。生まれる国は選択することはできないとしても、生活する国は選択することができるのだから、生まれた国が嫌なら出て行けばいいという人もいますが、そのような考え方は多数派の暴力だと思います。<br />
今は激動の世の中ですが、相変わらず行政文書の改ざんだの、貴乃花の処分だのしかテレビでやらない日本という国は、きっと平和なんだろうなと思われます。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 国家保安法第7条第5項に規定されている「頒布行為」とは夷狄表現物を不特定または多数人に配布して知得できる状態におくことをいう。一方、幇助は正犯が犯行をすることを知りながらその実行行為を容易にする従犯の行為なので、従犯は正犯の実行を幇助するという幇助の故意と正犯の行為が構成要件に該当する点に対する正犯の故意がなければならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審は、その判示のような事情を総合し、本件169個の掲示物は「わが民族だけ」ツイッターアカウントで作成されたツイートの文字で、被告人が上のアカウントをフォローした状態で維持したことだけでは上の掲示物が被告人のツイッターアカウントのみに掲示されるのみで被告人のアカウントをフォローする第三者のツイッターアカウントに掲示されないので、他に被告人が上の掲示物をリツイートするなどによって上の第三者のアカウントに掲示されるようにしたという事情がない以上、被告人が「わが民族だけ」ツイッターアカウントをフォローした状態を維持したことのみでは本件169個の掲示物を頒布したといはいえないと判断した。さらに原審はその判示のような理由で被告人が「わが民族だけ」ツイッターアカウントの運営者の夷狄表現物の頒布行為を幇助する犯意で上のアカウントをフォローしたとはいいがたいと判断した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審は、その判示のような事情を総合し、「わが民族だけ」ツイッターアカウントは北朝鮮が運営及び管理する対韓国宣伝用アカウントなので、被告人が上のアカウントをフォローした状態を維持したことのみでは上のアカウントに掲示された本件169個の掲示物を管理していたといい難く、他に被告人が上の掲示物を出力または貯蔵するなどの方式で所持したことが認められないと判断した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審判決の理由を関連法律と記録に照らしてみると、原審の上のような判断は正当で、これに上告理由の主張のような論理と経験の法則を違反して自由心証主義の限界を超えたり、国家保安法第7条第5項で定める夷的表現物の所持に関する法理を誤解した違法はない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-1476783053561095152018-03-29T15:51:00.000+09:002018-03-29T15:51:04.763+09:00犬鍋にするために犬を殺したことが動物愛護法違反とされた事件(済州地方法院2018年3月22日判決) 本件は、犬鍋にするために犬を殺した方法が残虐であるとして動物愛護法違反の罪となり、懲役8ヶ月執行猶予2年、保護観察と160時間の社会奉仕を命じられた事件です。<br />
韓国では夏になると体力をつけるために犬を食べる習慣があって、よくテレビで犬を盗まれたというニュースをやっていました。血統書付きの犬を盗んで食べたのが見つかって何百万円の損害賠償を請求されたというのもありました。<br />
本件は犬を食べたこと自体が犯罪となったのではなく、犬の殺し方が残忍であったとして動物愛護法違反の罪となりました。スイスではロブスターを生きたままゆでることが法律で禁止されるようになりましたし、食べるために動物を殺すにしても、愛情をもって殺さなければならないということなのでしょうか。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"> </span><span style="font-family: inherit;">いかなる者も動物に対して道具、薬物を使用して傷害を負わせる虐待行為をしてはならない。<o:p></o:p></span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、被告人らは2017年3月25日12時ごろ、済州市にある道路でCから買い入れた犬1匹を被告人Aのオートバイにひもでつないでから被告人Aはオートバイを運転して行き、被告人Bは後ろから乗用車を運転して付いていく方法で上の犬を無理やり連れて行き、上のオートバイについて走って行ったが疲れて倒れた犬を続けて引っ張っていくことで犬の脚や口などに擦過傷などを与えて虐待行為をした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> いかなる者も首をつるなどの残忍な方法で動物を殺してはならない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> それにもかかわらず、被告人らは2017年3月25日13時ごろ、済州市にある被告人Aの住居地横の空き地で被告人Aは上のように引っ張ってきた犬の首にひもをつないでそこに設置されていた鉄パイプにかけてから、犬を持ち上げて、被告人Bは横でこれを見守る方法で共謀して上の犬をつるして残忍な方法で犬を殺した。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-89435789858605119142018-03-23T14:25:00.003+09:002018-03-23T14:25:29.753+09:00受刑中の被告人に執行猶予の判決ができるか(仁川地方法院2018年2月22日判決) 本件は、仁川拘置所に収監されていた被告人が、懲役刑が確定して矯正施設に移されるのが嫌で、自分の住所地に近い拘置所に移動できるように、知人に自分を詐欺罪で告訴させた事件です。これにより、虚偽告訴教唆罪で執行猶予付きの懲役刑となりました。<br />
懲役刑が確定したからと言って直ちに刑務所に行くわけではなく、しばらくは拘置所にいて、その期間に別の事件で逮捕されたり起訴されたりすると、刑務所ではなく、そのまま拘置所で受刑することになります。被告人は、遠くの刑務所に行ったら家族から面会に来てもらえなくなるので、家の近くの拘置所で受刑できるように策を弄したのだと思われます。<br />
なお、執行猶予について、韓国の刑法では、禁固以上の刑を宣告した判決が確定したときからその執行を終了したり免除されてから3年までの期間に犯した罪について刑を宣告する場合には執行猶予を付けることができません。<br />
本件は、被告人が恐喝罪の懲役刑が確定する前に犯した罪なので、被告人が受刑中であっても執行猶予をつけることができました。<br />
日本の刑法では、前に禁固以上の刑に処されたことがない者、または前に禁固以上の刑に処されたことがあってもその執行を終わった日から5年以内に禁固以上の刑に処されたことがない者は、刑の全部の執行を猶予することができると規定しているので、条文上は懲役刑に処されたことがある被告人には執行猶予を付けることができないように思えます。<br />
しかし、判例(最高裁昭和28年6月10日判決)は、同時に審判されていたら刑の執行を猶予することができたという理由で、刑が確定する前に犯した罪については執行猶予を付けることができるとしているので、日本でも執行猶予を付けることができます。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2016年7月21日ごろから現在まで仁川市南区にある仁川拘置所に収監中である者で、2017年3月30日に仁川地方法院で恐喝罪などにより懲役8月を宣告され、2017年11月28日にその判決が確定した。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2017年7月ごろ、上の判決が確定すれば他の矯正施設に移監されることを予想し、従来ソウル東部拘置所の同じ部屋で収容生活をして知り合ったBに依頼し、ソウル城北区にある被告人の住居地と近いソウル北部地方検察庁に自分を虚偽事実で告訴させることにした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、2017年7月18日ごろ、仁川拘置所の接見室でBに「兄さん、事件を作ってソウル北部地方検察庁に俺を告訴してくれ。移監しなきゃ」と依頼し、上の日時ごろ、仁川拘置所で詐欺事件の告訴時に一緒に提出する支払履行覚書を作成してから、妻をとおしてBに交付して、Bをして捜査機関に被告人を虚偽告訴させるようにした。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> そうしてBは2017年8月初めごろ、ソウル東大門区の行政書士事務所で「被告人であるAは、2016年3月12日ごろ、告訴人Bに2016年12月末までに弁済する条件で、被告訴人の妻が運営するカラオケボックスの修理費用として1000万ウォンを借りて、支払履行覚書を作成したが、これまで上の1000万ウォンを返済しないので、被告訴人を詐欺罪で処罰してほしい」という内容の告訴状を作成し、2017年8月16日ごろ、ソウル道峰区にあるソウル北部地方検察庁の民願室に上の告訴状を郵便で送った。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> しかし、事実は、被告人はBから被告人の妻が運営するカラオケボックスの修理費用の名目で1000万ウォンを借りた事実はなかった。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 被告人は、上のようにBに被告人をして刑事処分を受けさせることを目的に公務所に虚偽の事実を申告するように教唆した。</span></blockquote>
<div class="MsoNormal">
<span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"> </span><span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"><o:p></o:p></span></div>
<br />
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-9127456228396166412018-03-20T18:10:00.001+09:002018-03-20T18:10:55.492+09:00性暴力処罰法(カメラ等利用撮影)の適用について(大法院2017年12月28日判決) 本件は、被害者が自分で撮影した下腹部の写真を被告人に渡したところ、被告人がその写真をSNSにアップしたことが、性暴力処罰法に規定するカメラ等利用撮影に該当するかが争いになりました。<br />
性暴力処罰法が規定するカメラ等利用撮影は他人の身体を撮影したり、その撮影物を公に展示した場合に処罰することを規定していますが、原審は、他人の身体が撮影された撮影物を展示した場合にも処罰することができると解釈しましたが、大法院は被告人が他人の体を撮影した撮影物を公に展示した場合にのみ処罰するとしか解釈できないとし、被害者が自分の意思で撮影したものを被告人が公に展示した場合は処罰できないとしました。<br />
日本ではリベンジポルノが問題になったことから2014年に私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ被害防止法)が制定され、性的な写真を不特定多数の者に提供すると処罰されるようになりましたが、撮影対象者が自分で撮った写真であっても第三者が閲覧するつもりでなければ、その写真を不特定多数の者に提供すると処罰されます。本件が日本で発生した事件であれば、リベンジポルノ被害防止法によって処罰されたと考えられます。<br />
一方、韓国では早い時期から性暴力処罰法を制定して性暴力に対応し、リベンジポルノについても被告人が撮影したものであれば処罰することができます。しかし、リベンジポルノは被害者が自分で撮影した性的写真を渡した後でインターネットなどで公開されてしまうことがよくあるので、これに対応できるように性暴力処罰法の改正が望まれます。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: 'MS 明朝'; font-size: 10.5000pt; mso-ascii-font-family: Century; mso-bidi-font-family: 'Times New Roman'; mso-font-kerning: 1.0000pt; mso-hansi-font-family: Century; mso-spacerun: 'yes';"> </span><span style="font-family: inherit;">本件公訴事実のうち予備的控訴事実である性暴力犯罪の処罰等に関する特例法違反(カメラ等利用撮影)の点の要旨は「被告人は2012年初めごろCが自分の下腹部にAというタトゥーを入れ、携帯電話に内蔵されたカメラを利用してこれを撮影してから、被告人に電送したが、上の写真はタトゥー自体の形状のみならず被害者の陰部の一部分も撮影されていたもので、性的羞恥心を誘発しうる身体を撮影した写真であって、被告人は2012年8月26日ごろ、ソーシャルネットワークサービスであるDに上のように被害者から電送されて保管していた写真2枚をアップすることによって、性的羞恥心を誘発しうるCの身体が撮影された写真を公に展示した」というもので、原審判決は上の公訴事実について性暴力犯罪の処罰等に関する特例法(以下「性暴力処罰法」という)第14条第2項、第1項を適用して有罪と判断した。<o:p></o:p></span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 性暴力処罰法第14条第2項の撮影物は「他人」を撮影対象者としてその身体を撮影した撮影物を意味するものであることが文言上明白なので、自分の意思によって自ら自分の身体を撮影した撮影物まで上条項所定の撮影物に含ませることは文言の通常的な意味を外れた解釈である。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 本件写真は被告人が他人の身体を撮影した撮影物でないので、上にみた法理により性暴力処罰法第14条第2項および第1項の撮影物に該当せず、従って、上条項によって処罰できない。原審が挙げている大法院2016年10月13日判決は事案を異にするものなので、本件に適用することは適切でない。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 原審判決のうち予備的公訴事実である性暴力処罰法違反(カメラ等利用撮影)の点が破棄されるので、これと一体の関係にある主位的公訴事実である情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)の点に関する原審判決部分も一緒に破棄されなければならない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3268243052127600961.post-81531622491513160112018-03-19T14:49:00.000+09:002018-03-19T14:49:41.163+09:00無罪になった場合に起訴が違法であったと慰謝料を請求できるか(釜山地方法院2018年2月21日判決) 本件は、複数の恐喝、暴行などの事件で起訴された原告が、そのうち3つの恐喝事件について無罪となったことから、検察官が被害者の虚偽の陳述をうのみにして起訴および控訴したとして国に精神的苦痛に対する慰謝料を請求したものです。<br />
原告は起訴事実の一部が無罪になっただけで、残りの犯罪事実によって有罪の判決を受けているので、身体拘束を受けていた期間に対する補償をうけることはできないことから国家賠償訴訟を提起したものと思われます。<br />
刑事裁判で無罪になったことだけでは起訴が違法になることはないという判断は、日本では1978年10月20日及び1989年6月29日に最高裁が、韓国では2013年2月15日に大法院が判決の中で述べています。<br />
検事は有罪か無罪かを判断してもらうために裁判所に起訴することが仕事なので、結果として無罪と判断されたからといって直ちに起訴したことが違法にならないというのはそうなのでしょうが、そもそも罪となる事実がなかったにもかかわらず、そのような事実があると判断して起訴した場合は、少なくとも過失があるように思えます。<br />
つまり、起訴事実は存在するが、それが刑法上の犯罪にあたるかどうかの判断が検察と裁判所で分かれるということはあるとしても、起訴事実が存在しないのに、検察の収集した証拠から起訴事実が認定できるかどうかの判断が検察と裁判所で分かれるということはありえないだろうということです。<br />
確かに、裁判所が起訴事実の存在を認めなかったとしても、それは起訴事実が存在しなかったということではなく、検察官の収集した証拠からは起訴事実が認定できないというだけなのでしょう。起訴事実の存否は被告人しか知らないのですから。<br />
以下は、判決の一部抜粋です。<br />
<a name='more'></a><br />
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 地方警察官や検事は捜査機関として被疑事件を調査して真相を明白にし、収集、調査された証拠を総合して被疑者が有罪判決を受ける可能性がある程度の嫌疑を抱くようになったことに合理的な理由があると判断されるときには、所定の手続きによって起訴意見として検察庁に送致したり裁判所に公訴を提起することができるので、客観的に見て司法警察官や検事が当該被疑者に対して有罪を判決を受ける可能性があるという嫌疑を抱くようになったことに相当な理由があるときには後日裁判過程をとおしてその犯罪事実の存在を証明することに足りる証拠がないという理由でそれに関して無罪の判決が確定したとしても、捜査機関の判断が経験則や論理則に照らしておよそその合理性を肯定することができない程度に達している場合にのみ帰責事由があるといえる。</span></blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<span style="font-family: inherit;"> 甲1号証、甲2号証、乙1号証から乙4号証の各記載によると、上の各無罪部分の被害者らは警察で被害事実に関して陳述したが、被害者らが法廷で陳述内容を覆したり、被害者らの陳述調書などが刑事訴訟法上の証拠能力を持たずに無罪が宣告されたことが認められる。上の認定事実のみでは被害者がらの陳述調書などに基づいて原告を起訴し、無罪部分に不服で控訴を提起した捜査機関の判断が経験則や論理則に照らして合理性を肯定できない程度に達しているといい難い。結局、捜査機関の業務執行に違法な故意、過失があったといえないので、原告の主張が理由がない。</span></blockquote>
石井賢太朗http://www.blogger.com/profile/17646040956462334929noreply@blogger.com0